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記録の神様・宇佐美徹也が
見つめた数字の「裏」とは。
~記録からドラマを紡いだ野球人~ 

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永谷脩

永谷脩Osamu Nagatani

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posted2009/06/12 06:00

「記録の神様」と呼ばれた宇佐美徹也さんが急性呼吸不全のため76歳で亡くなった。5月17日のことだった。

 高校卒業後、公式記録員として初の野球殿堂入りを果たすことになる、山内以九士氏に師事。その後、パ・リーグの記録員から1964年に報知新聞に転じ、当時としては斬新だった記録をメインに扱うコラム「記録室」を連載。これが評判となり、V9を達成した川上哲治元巨人監督をして「記録はあの人に聞けばいい」と言わしめたほどである。

 サンケイスポーツの記録部次長を長く務めた庵原英夫氏は「そりゃ、記録に関してはアッと言う間に数字が出てきたし、すごかった。師匠の山内さんに次ぐ殿堂入りは、宇佐美さんじゃないかといわれていた。現在のセーブ記録のルールを作ったのも、あの人じゃないか」と記録に携わる人間からも、一目も二目も置かれる存在として名を馳せていた。

世界の王を唸らせた驚異の分析力。

 '77年には、野球に関する記録を体系的に分析した『プロ野球記録大鑑』を刊行。また'83年には、王貞治、長嶋茂雄の現役時代の全打席を分析できる『ON記録の世界』を世に送り出した。これにはユニフォームを脱ぐ際に王が「自分でも知らないことをよくも……」と驚いたほどだ。

 初めて声をかけられたのは、'98年に亡くなった、スポーツライター佐瀬稔氏のお別れ会を企画している時である。佐瀬氏とは栃木県佐野高校の同級生。そのふたりが、奇遇にも同じ報知新聞で席を共にする時期があった。野球を人間ドラマとして捉える佐瀬氏。数字で分析する宇佐美さんとは対極にあったが、佐瀬氏のことを「どこかで意識していたのかもしれない」としみじみと語っていたのを、昨日のことのように思い出す。

結果に至る過程の大切さを教えてくれた。

「数字が出てくる過程が重要なんだ」と教えてくれたことも忘れられない。最近の球界では、選手が残した記録だけを見て、良し悪しを判断する傾向が強まっている。

 しかしそんな無味乾燥な世の中だからこそ、冷徹な記録の裏に隠されている人間ドラマを読み解く宇佐美さんの存在が必要だった。教えて欲しいことはまだまだ尽きないだけに悔やまれる。

「記録」という側面からプロ野球を支えた宇佐美さん。「神様」と呼ばれた男が、静かにその生涯を閉じた。

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