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英雄ロッシがセリエAで吠える日。
~米国生まれのストライカー~ 

text by

酒巻陽子

酒巻陽子Yoko Sakamaki

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2009/06/28 06:00

英雄ロッシがセリエAで吠える日。~米国生まれのストライカー~<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

 セリエA帰還へのカウントダウンが始まった。ユベントスがスペインのビジャレアルに所属するFWジュゼッペ・ロッシの獲得に本格的に乗り出したことから、ロッシが再びセリエAでプレーする可能性が高まった。憧れのセリエA。オファーを出しているクラブはリーグ優勝奪回に燃えるユベントス。ゼブラ軍団がビジャレアルに好条件を提示すれば、電撃的に「ユベントスのロッシ」が誕生することになる。

南米的センスの持ち主が、今やアズーリの中心に。

 2008年10月11日にイタリア代表メンバーに初招集されて以来、不利な戦況でもチームに勝利をもたらしてきた。南アフリカ大会のコンフェデレーションズ杯初戦でのパフォーマンスは圧巻だった。鮮やかなシュートで同点弾を奪うと、後半ロスタイムにはMFピルロのクロスに逆サイドから走りこんで蹴り込む。米国の息の根を止めるには十分すぎる2発だった。

 至宝ロベルト・バッジョが引退し、セリエAが誇る司令塔トッティも去ったイタリア代表。彼らと同じ役割をこなせる選手が現れることは不可能と思われていたが、代表新参者のロッシが先輩格の度肝を抜く爆発的な攻撃力を遺憾なく発揮。W杯連覇を狙うアズーリのゲームメーカーとして、今やチームの中心的存在になっている。ゴール瞬時に「カモン」と一声を発する点もチームメイトとの違いの一つであるが、感覚的な部分で得点を重ねるロッシ流サッカーには南米的要素を感じてならない。

「米国生まれ」への偏見がロッシに「武器」を与えた。

 冒頭で触れたように、今夏セリエA移籍市場ではロッシの去就が注目を集めている。しかし、国内の各クラブがロッシという新たな可能性にトライするのは些か遅すぎたと言えよう。13歳で単独渡欧、その後マンチェスターUTD、ビジャレアルと早熟の天才と呼ばれたロッシに対して、今日に至るまでセリエAの各クラブ幹部が素っ気ない態度を示した理由はなにか?

「野球の地で生まれ育った若造」

 ロッシの経歴に幹部たちはそんな偏見を持っていたと憶測する。イタリア移民であってもアメリカ仕込みのサッカーを過小評価することで、ロッシをセリエAでプレーさせることに大いに困惑したのだろう。唯一、タンツィ帝王が手腕を振るった当時のパルマが13歳のロッシ少年を射止めた。ところが、アルゼンチンから埋もれた逸材を発掘し、アグレッシブなチームを構築したあのパルマでも、「ユースではパワーだけでは勝負にならない」と、組織力に欠ける点がセリエAの器ではないと評価したようだ。近年セリエAに所属するセカンドストライカーが軒並み好調をキープしているだけに、年若いアメリカンの熱意はセリエAクラブの首脳陣に届かなかった。

 10代の頃から欧州の名門を転々としていることから、プレミアから譲り受けたテクニックにスペイン仕込みのダイナミックを武器とするロッシが、スピーディーに進化した現代サッカーに十分通用すると見抜いたのはイタリア代表のリッピ名将だった。晴れてイタリア代表のメンバーに選出されたことをきっかけに、リッピアズーリで着実に足元を固める。

ロッシは「イタリアンドリーム」を掴めるか?

 W杯南アフリカ大会を翌年に控えた今、ロッシは無意識のうちに自身の闘争心に火をつける。「僕の頭にはイタリアしかない」。2006年のW杯ドイツ大会直前にも米国のブルース・アリーナ監督にそういって米国代表入りを拒否したエピソードはいまでも語られている。コンフェデレーションズ杯米国戦後、「ミラニスタだから行く手がミランだったらいい。己の才能を信じてプレーしているし、セリエAでも(通用する)自信がある」と、彼自身にとって悲願とさえ言えるセリエAへ意気込む言葉を初めて口にした。

 19世紀後半に渡米したイタリア移民たちの憧憬を「アメリカンドリーム」と呼ぶならば、ロッシの場合は「イタリアンドリーム」と言うべきなのか。若き英雄がセリエAで吠える日は刻々と迫っている。

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