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安藤優也 「仏頂面のポジティブ思考」 

text by

田口元義

田口元義Genki Taguchi

PROFILE

photograph byTakuya Sugiyama

posted2008/10/09 20:49

安藤優也 「仏頂面のポジティブ思考」<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

 今年、初の開幕投手を任された安藤優也は、横浜打線を5回2失点に抑え勝利投手となるが、「最低の中の最低限の仕事」と自身の投球に納得はしなかった。7月25日の中日戦で今季初完投勝利を収めても、「8回に簡単に1点を取られた。完封できたはずだから喜ばない」と唇を噛み締めた。自身最多の12勝をマークした8月25日の東京ヤクルト戦でも、「まだまだです。気を引き締めます」と、厳しい表情を見せた。

 どんなに好投をしても、自分自身の投球に100点満点をつけることはない。むしろ、必ず課題を見つけようとする。

 「それは確かにありますね。リリーフの時は『今日はいいピッチングをしたな』と思える試合はいくつかあったんです。ゲームの大事な局面で投げるリリーフを経験したからこそ芽生えた意識なのかもしれないですけど、先発に転向してからはいいピッチングをした記憶がないんですよね。むしろ腹立たしい投球のほうが……。多分、完全試合をしたら初めて自分を褒めるんじゃないですか?」

 今シーズン、好調阪神を支えたのは紛れもなく投手陣。とりわけ、チームの勝ち頭である安藤の活躍には目を見張るものがあった。だから、どれだけ自分を卑下してもファンは認めている。「安藤はエースだ」と。

 「『エース』という言葉にはすごく重みがある。チームから『こいつで負けたら仕方がない』と思われるようなピッチャーがエースなんでしょうね。すこしでも近づけたら、とは思っていますけど、自分はまだ、そこまでの存在にはなれていないと思っています」

 安藤は、涼しい表情で淡々と質問に答える。マウンド上でもそうだ。ピンチの場面で抑える、打たれる。それでも顔色ひとつ変えない。仏頂面だとすら感じる。

 「試合中、表情変わりませんよね?」。そう尋ねると、安藤は待ってましたと言わんばかりに話し出す。

 「『別人みたいだ』とかよく人に言われるんですよね。試合ではある意味、自分を作っているというか、『ピッチャーたるものマウンド上では相手に気持ちを悟られるな!』って小学校から教育されてきたんで。本当は、心の中では『ヨッシャー!』とか『クッソー』って思ってるんですよ、ハハハ!」

 無骨だと思っていた安藤が、笑った。

 「だから役者ですよ役者、アハハハ!― みなさんからすればそういうイメージってすごくあると思うんですよね。でも、それは表の部分。かっこよく言えば『仕事の顔』です」

 質実剛健で、殊勝なコメントを残す。そんな“安藤像”を我々は勝手に作り上げていたのかもしれない。

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