SCORE CARDBACK NUMBER

F・ニッポンを制した、星野とトレルイエの絆。 

text by

大串信

大串信Makoto Ogushi

PROFILE

posted2006/11/23 00:00

 「自分をこれまで支えてくれたスタッフの顔を見たら……」と言って、ブノワ・トレルイエは嗚咽を始めた。10月第4日曜にツインリンクもてぎで開催された全日本選手権フォーミュラ・ニッポン第8戦を優勝で飾り、シリーズチャンピオンとなって臨んだ記者会見でのことだ。トレルイエはしゃくりあげながら話し続けた。「感謝したい。今までの何年か一緒に仕事をしたスタッフ全てに」

 全日本F3選手権の助っ人ドライバーとしてトレルイエは'00年、23歳のときに来日した。助っ人と言えば聞こえが良いが、母国フランスで壁に突き当たり、活路を探って極東の島国までやってきたのだ。なぜか我がニッポン国では国内レースを見下す風潮が蔓延しているが、本場ヨーロッパには日本のレースにチャンスを見出す若者が確実にいる。果たしてどちらが現実的なのかはともかく。

 トレルイエも自分の判断が正しいのかどうか迷いながら日本での活動を本格化させた。そして組んだのが、日本一速い男として国内レースに君臨した名選手、星野一義である。星野率いるインパルと契約してF・ニッポンを闘い4年、トレルイエはとうとう日本の頂点を極めた。

 「今年の開幕前に星野さんと話した。その時、『これまでのリザルトを見ろ。1位か2位かリタイアしかない。もし全部のレースで完走したら、簡単にチャンピオンになれるんだぞ』と言ってくれた。だから、今年はそれを実行しただけ。どうして今まで僕はそんなことに気づかなかったんだろう」

 トレルイエの星野に対する信頼は厚い。もっとも、今年トレルイエの走りが守りに入ったわけではない。むしろ圧倒的な力でライバルを打ち破る迫力に満ちていたと思う。その結果だから、トレルイエがF・ニッポンの王座についたことに納得しない人間はライバルたちを含め誰もいるまい。

 「ブノワをチャンピオンにしたいというのが、僕の夢だった」と会見に同席した星野はもらい泣きした。「来年も、できればうちのチームにいて欲しいけど、なんとかF1のテストドライバーになれないかな。腕は僕が保証する。いい話があったら紹介してよ」

 誰が言ったか「日本一速いフランス人」。トレルイエの王座獲得を祝福する。

ページトップ