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最年少記録から6年。松田次生が帰ってきた。 

text by

大串信

大串信Makoto Ogushi

PROFILE

posted2006/08/31 00:00

 「今度は天狗にならないようにしたい」と松田次生は繰り返した。フォーミュラ・ニッポン第5戦の入賞者記者会見でのことだ。今季、シリーズは開幕戦から第4戦まで悪天候に見舞われたが、第5戦は好天に恵まれた。予選、決勝ともドライコンディションとなり、決勝でチェッカー旗を受けた17台が全車同一周回という大接戦となった。その激しい闘いを制したのが伏兵、松田であった。

 松田は2000年、20歳にしてF・ニッポン第3戦で優勝し、国内トップフォーミュラ史上最年少優勝記録を打ち立て注目を浴びた。しかしその後の彼は優勝に見放され、そのまま6年の歳月が流れた。若手の注目株だった松田は、2勝目をあげられぬままいつしか中堅どころと数えられるに至った。

 勝ちを忘れた我が身を振り返り、松田は「原因は初優勝で天狗になったから」と言う。中嶋悟よりも星野一義よりも鈴木亜久里よりも片山右京よりも早く国内トップフォーミュラ優勝を成し遂げたのだ。前途には洋々たる未来が開けたように思えただろう。20歳の青年が天狗になるのも致し方あるまい。だがレースはそれほど甘いものではなかった。勝てないままシーズンを重ねた松田は、最大の理解者であった父親にすら「いつまでレースにしがみつくつもりか。今年勝てないようならレースをあきらめろ」と諭され、今シーズンを迎えた。

 今年、松田は昨年のチャンピオンチーム、星野率いるインパルと契約した。自分の能力以外の要素が競技結果に大きな影響を及ぼすモーターレーシングでは、敗北の原因を自分以外の部分に求め、現実から逃避しがちだ。最強チームであるインパル入りは松田にとって嬉しい抜擢だったが、逆にもう逃げ場はない。松田自身、今年勝てなければレースから身を引く覚悟をして開幕に臨んだという。

 そしてもぎとった6年ぶりの優勝だ。しかも金石年弘と延々と繰り広げた格闘は充実していた。周囲にとっては遅すぎた2勝目ではあるかもしれないが、松田にとっては大きな意味がある。これでシリーズランキングはチャンピオンの見える2位となった。今度こそ勝利をきっかけに未来が開けるだろうか。もう6年前と同じことを繰り返すまいと自らを戒める、松田の出直しが楽しみではある。

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