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リーグ戦を揺るがした関東・大麻事件の余波。 

text by

大友信彦

大友信彦Nobuhiko Otomo

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photograph byShinsuke Ida

posted2007/12/13 00:00

リーグ戦を揺るがした関東・大麻事件の余波。<Number Web> photograph by Shinsuke Ida

 「僕らが下を向くことはないんです」

 11月24日の秩父宮。大東大を破り、関東大学ラグビーリーグ戦グループ初優勝を決めた東海大の木村季由監督は静かに言った。グラウンドでは胴上げはおろか、手を突き上げて喜ぶ選手もいなかった。

 創部から45年、木村監督の就任から10年目の初栄冠。なのに笑顔がないのは、それが関東学院大の不祥事による「棚ボタ」優勝だったからだ。

 「ウチは関東学院さんには1点差で負けています。ただ、リーグ戦を一戦一戦しっかり戦ってきた結果として今日がある。そう理解しています」(木村監督)

 関東学院大ラグビー部員2名が、大麻取締法違反で逮捕されたのは11月8日夜。同校は、二転三転の末に今季の対外試合を自粛すると発表したが、事件は佳境を迎えていたリーグ戦を動揺させた。優勝を、大学選手権出場を、そして入れ替え戦回避をかけて、リーグ戦はあらゆる順位に意味があるのだ。

 最終戦で関東と対戦する予定だった法大の和田耕二主将は、17日の大東大戦後に「星勘定するヤツもいて、チームに緩みが出てしまった」と話した。事件の時点で2勝3敗。大学選手権出場へは後のない崖っ縁だったが「関東戦が不戦勝なら大学選手権は当確」という楽観論が広がってしまったのだ。「関東のことは関係ない、目の前の試合に勝つことに集中しようと言い続けて」(和田)、急遽リーグ最終戦となった大東大戦の2日前、ようやく練習に緊張感が戻り、結果的には今季のベストゲームを演じて見せた。

 関東の辞退でリーグ戦2位に繰り上がったのが拓大だ。1部復帰1年目ながら7人制日本代表の横山伸一・健一の双子エースを軸に躍進。事件直後の11日には中大に終了直前の劇的逆転で勝ち、翌週に立正大が流経大に敗れたことで、悲願の大学選手権初出場が決まったが、最終戦ではその立正大に22点リードから5点差まで猛追される冷や汗の勝利。「3年前は立正に負けて2部落ちしたんです」と横山伸一主将は苦笑して「選手権に向けて、またいい勉強をさせてもらった」。

 動揺。当惑。誤算。教訓……事件の余波は、様々な形で各校に及んでいた。

 大学選手権が始まる。王者がいない寂しさを、リーグ戦の仲間で埋めてほしい。

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