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中冨のWSB参戦に見えた、「全日本」の地盤沈下。 

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遠藤智

遠藤智Satoshi Endo

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posted2006/01/12 00:00

中冨のWSB参戦に見えた、「全日本」の地盤沈下。<Number Web> photograph by Satoshi Endo

 全日本最高峰クラスJSBに参戦している中冨伸一の、スーパーバイク世界選手権(WSB)参戦が決まった。このクラスには、芳賀紀行、阿部典史(いずれもヤマハ)、加賀山就臣(スズキ)、そしてスーパースポーツ選手権に藤原克昭(ホンダ)が参加している。中冨の参戦で、同シリーズには5人の日本人選手が参加することになる。

 しかし、グランプリ(WGP)を経験してWSBにスイッチしてきたこれまでの選手たちとは対照的に、中冨は海外レースの最初の舞台がWSBとなる。中冨は'00年にホンダで全日本250ccクラスのタイトルを獲得。その後、ヤマハに移籍してJSBに参戦し、今年は2勝を上げて総合4位という成績を残した。

 ホンダはこの数年、英国スーパーバイク選手権に清成龍一を走らせ、WGPにはスカラシップで青山博一、高橋裕紀を送り出した。ヤマハも遅ればせながら、日本人選手の海外挑戦を再開した格好だ。

 ライダーが国内のチャンピオンを取ってから世界に進出する、というひとつの形が存在した時代は、全日本にワークスチームが参戦できた。いまの全日本では、ライダーはメーカーとの契約ながらも、参戦はディーラーやショップが運営するチームからとなる。そのために、メーカーは選手を育てる舞台として、WGP以外の海外カテゴリーを選ぶようになった。

 この数年、ヤマハはWGP最高峰のモトGPでタイトルを取るためにさまざまなものを犠牲にしてきた。そのひとつが、他カテゴリーの規模縮小でヤマハが育てた日本人選手の他チームへの流失だった。しかし中冨の参戦で、その流れにとりあえず終止符を打つことになったようだ。

 中富の初テストは、12月中旬のスペイン・バレンシア。参戦発表のリリースで、中冨は「JSBでタイトルを獲るという大きな仕事をやり残しているが、来年は勉強の年ではなく、攻めの走りに徹したい。チャンピオン争いに加わりたい」と熱い決意を語っている。

 それにしても、日本と世界の距離がどんどん遠ざかっていることを痛感させたのは、リリースが出された後のヨーロッパのマスコミの反応だった。「Who Nakatomi?」。日本のレース界の地盤沈下が、世界との距離を広げていることを痛感させる出来事だった。

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