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学生チームのル・マン参戦に苦言を呈す。 

text by

大串信

大串信Makoto Ogushi

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posted2008/07/24 00:00

 6月14日から15日にかけて開催されたル・マン24時間レースに、東海大学の学生チームが参戦した。大学の名を冠したチームが伝統あるル・マンに参戦したのは史上初のこと。チームは最高峰のクラスであるLMP1クラスにエントリー、決勝では18時間走行後にトラブルを発生してリタイアを喫したが、その結果も健闘だったとは言えるだろう。

 だが、わたしには一般メディアほどには手放しでこの挑戦を賛美する気にはなれない。学生チームとは言いながら、その主力は外部から助っ人に入ったプロの技術者たちだったし、公式予選タイムは正式な予選通過基準には遠く及ばず、通常ならば予選落ちのところ、決勝出走ができたのは、レース運営団体の特別な計らいがあったからだ。

 決勝レースでも、ペースを落として恐る恐る走る状況が続いた。出来る限り長時間走り、できれば完走して経験を積もうという作戦はそれなりに評価できる。その結果が18時間走行だったのだからそれは大戦果だったとは言おう。

 問題はレース後に東海大学から送られて来た挨拶状の文面であった。そこには、「学生が設計製作した車両の『走行実験』をル・マン24時間レースにおいて実施することができました」と記されていたのだ。この文言には仰天した。

 ル・マンの決勝で「走行実験」をやってはいけない。ル・マンを戦うLMP1の上位陣は他のサーキットを上回る超高速を真剣に競っており、東海大チームのマシンを操ったプロドライバーたちは、その激戦の中、命がけでコースを徐行するのだ。それをつかまえて「走行実験してきました」と言うのはプロドライバー及びル・マン24時間という世界的クラシックイベントに対する冒涜である。

 おそらく、ル・マンのなんたるかを理解しない事務方の作文ではあろうが、もし学生チームとしての活動を継続する気があるならば、現場との意識のズレは是正しておくべきであるし、今回のきわどい戦いぶりを眺めるに、クラスを引き下げて参戦体制を見直した方が、学生チームとしてはより実のある活動になるのであるまいかと思う。学生チームのレース参戦の意義と、学生たちがル・マンの現場で繰り広げた苦闘は十分に認めたうえで、敢えて苦言を呈しておく。

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