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上原と井川のポスティング要求は、わがままだろうか。 

text by

阿部珠樹

阿部珠樹Tamaki Abe

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posted2005/02/17 00:00

 キャンプがはじまったというのに、ジャイアンツとタイガースのエースが契約を更改していないという異例の事態がつづいている(2月2日現在)。上原浩治と井川慶は、ともにポスティングシステムを使ったメジャーリーグへの移籍を求めて球団との契約交渉がもつれているのだ。井川のほうはひとまず今季の残留が決まったが、上原のほうは着地点が見えないままキャンプに入ってしまった。

 今回の件では球団はもちろんファンやメディアの間でも、二人に厳しい意見が多い。キャンプがはじまり、チーム一丸となってシーズンに臨まなければならない時期に、わがままはやめろというわけだ。特に、スポーツ紙、夕刊紙などは、編集委員、デスククラスが書くようなコラム、小さな囲み記事などでは選手にかなり厳しい立場を取っている。

 しかし、上原や井川の要求をわがままと決め付けるのは疑問だ。ポスティングというのは、FAのように黙っていても年数が経過すれば手に入る権利ではない。球団の同意を受けてはじめて成立するシステムである。FAが自動ドアなら、ポスティングはノックした上でカギを開けてもらわなければならないドア、しかも飛び切り重い鉄製のドアみたいなものなのだ。ドアを開けるには自分の手で何度もノックしなければならない。上原や井川が契約交渉でおこなっているのは、そのノックである。

 ちょうど10年前、野茂英雄がメジャー移籍を表明し、球団との話し合いがもつれたときも、野茂にいちばん厳しかったのはメディアだった。「ルールを守れ」という論拠で、わがままだと糾弾した。しかし、上原や井川はルールに則った要求をしているのだから、これを責めるのは、それこそルール違反だといえる。

 ポスティングというシステムに問題が多いことは以前から指摘されてきた。ポスティングの導入に熱心だったのは、選手の流出が予想されたパ・リーグの球団で、ジャイアンツやタイガースのような人気球団は、まさか自分のところの選手がポスティング移籍を望むなどとは考えていなかったろう。ポスティングが成立するのは、年俸が高くて抱えきれない上に、タダで選手を出したくないと考えている球団と、メジャーでやってみたいという選手の思惑が一致した場合に限る。イチローのようなケースはあくまでも偶然うまくいっただけなのだ。この制度がつづく限り、上原や井川のようなケースは毎年生じてくるだろう。

 以前からいわれてきたように、新しい移籍のルールを早く作る必要がある。一部にはレンタル移籍を導入するといった声もあるが、メジャーに行った選手のほとんどが、年俸に関係なくメジャーで選手生活を終えることを望むのをみると、あまり有効な制度とも思えない。選手会は、FA資格の早期取得を考えているだろうが、こちらはドラフトの完全ウエーバー制とリンクしていて簡単に決まりそうもない。思うに、カギは外国人枠の撤廃ではないか。選手の流出はやむをえない流れと見て、反対にメジャーからの獲得も積極的に進める。支配下選手の枠をなくし、外国人選手の制限もやめる。メジャーがエースを取るなら、こっちもクレメンスやランディ・ジョンソンを取ってやる。そういう積極策しか、根本的な解決にはつながらないだろう。これが決め手なんだがなあ、と思っていたら、同じことをいっている人がいました。ジャイアンツの渡辺前オーナーである。うーん、またしてもかの人の掌の上か。

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