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バレーボールの戦術を
変える陰の演出家。
~ボールはプレーをどう変えるか?~ 

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久保大

久保大Masaru Kubo

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photograph byMichi Ishijima

posted2011/03/07 06:00

バレーボールの戦術を変える陰の演出家。~ボールはプレーをどう変えるか?~<Number Web> photograph by Michi Ishijima

 昨年末、竹下佳江に今、何を一番考えながらプレーしているかを聞いた時、少し意外な答えが返ってきた。11月に世界選手権で銅メダルを獲得し、32年ぶりに全日本女子は表彰台に上った。V・プレミアリーグが開幕したのは、それからわずか2週間後。フィジカル、メンタルのコンディションを維持する難しさについてだろうと予想していた。

「ボールがモルテンに変わったので、手に入った時の感覚が違う。トスアップの時に、一番神経をつかいます」

 Vリーグは、オフィシャルサプライヤーとしてミカサ、モルテンと契約し、一年ごとに男女を入れ替えながら使うことになっている。今季の女子使用球は、モルテン。ただし、Vリーグ期間中の12月に開催された皇后杯は、ミカサ。また、国際バレーボール連盟の主催する大会は2016年までミカサを使うことが決まっている。コンビプレーを操るセッターの竹下を始め選手たちには、ボールが変わることが大きな負担になっている。

ミカサの新球の特長をいち早く見抜き利用したブラジル。

 実はボールは近年、戦術にも大きな影響を与えている。

 きっかけは、北京五輪から使用されたミカサの新球だった。無回転時に大きく揺れる特性をいち早く見抜き利用したのが、北京五輪金メダルのブラジル。新球はサーブが伸びたり、落ちたりし、前後にゆさぶることができる。この効果を最も生かせるジャンプフローターサーブを全選手に習得させたのだ。

 全日本も'09年に就任した眞鍋政義監督の指示の下、ほぼ全員がジャンプフローターに変えた。全日本アナリストの渡辺啓太によれば、効果は劇的だった。これまでバレー界では、サーブの総打数中、サーブポイントの占める率は約3%、ミスが約12%と言われていた。世界選手権の全日本は、ポイント6.3%に対し、ミス6.9%。銅メダルを獲得した全日本躍進の原動力になった。

 データ解析の進むバレー界は、変化に対応しなければ生き残れない。ボールの特性さえも素早く戦術に落とし込んだものが、アドバンテージを得るのだ。

 新たにモルテンを使う今季のVリーグ。まだシーズン中だが、昨季に比べてサーブのポイント率が下がるデータが出ている。ボールがプレーをどう変えるか。陰の演出家にも注目である。

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