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苦節51年、三洋電機が掴んだ
“ラストチャンス”。
~初のトップリーグ王者に!~ 

text by

大友信彦

大友信彦Nobuhiko Otomo

PROFILE

photograph byTamon Matsuzono

posted2011/02/15 06:00

山田はプレーオフMVPと今季ベストフィフティーンのダブル受賞

山田はプレーオフMVPと今季ベストフィフティーンのダブル受賞

 概ね40歳以上のラグビーファンの頭には、あの映像が深く刻まれているはずだ。

 曇天の下、黒いジャージーを着た神戸製鋼のイアン・ウィリアムスがタッチ沿いを走り抜ける。追うグレーのジャージー、ワテソニ・ナモアの腕が宙を泳ぐ。イアンがインゴール中央まで回り込み、細川隆弘が逆転のキックを蹴り込む。観客席で宮地克実監督が茫然と立ち尽くす……。

 それから20年を経たトップリーグのプレーオフ決勝当日。朝のミーティングで三洋電機のメンバーが見た映像には、そんな無念の場面が、これでもかというほど収められていた。

「じゃあ、リラックスしていこう」と飯島均監督が声をかけると、チーム最古参のPR相馬朋和は目を腫らして、「こんなの見せられて、リラックスできるわけないじゃないですか」と言い返した。「すぐに試合をしたくなった。試合まで3時間待つのがもどかしかったよ」とトニー・ブラウンは言った。

パナソニックの完全子会社化で三洋ブランド消滅の可能性も。

 東京三洋として創部以来、51年間の歴史は苦難の連続だった。全国社会人大会では9度決勝に進出しながら、優勝はサントリーと両者優勝となった'95年度の一度のみ。それもトライ数差で日本選手権進出を逃した。トップリーグのプレーオフでは昨季まで3年連続で決勝敗退。シーズンを締め括る日本選手権では昨季まで3連覇を飾っているのに「悲運」、「無冠」の称号は、呪いのように野武士軍団に貼り付いていた。

 その三洋が、プレーオフ決勝でサントリーを28対23で破り、初めてのトップリーグ王座に就いた。

「この先何年何十年経っても、このシーズンは三洋電機が勝った、その結果が残るのが嬉しい」

 試合後の会見で、霜村誠一主将は言った。パナソニックの完全子会社となり、この春にも三洋ブランドは消える可能性がある。そうなればチーム名が変わるのも必然だろう。この大会は、三洋の名で優勝にチャレンジできる最後の機会だったのだ。

「今年はいろいろ変えた」

 飯島監督と霜村主将は口を揃えた。

「過去3年はチームにリスクを避ける傾向があったけど、リーグ戦はそれで順調に勝ててもプレーオフで勝てなかった。今年は開き直って、新しいことに挑戦した」(霜村)

 象徴は、ホンダから今季三洋へ移籍したWTB山田章仁の活躍だ。

<次ページへ続く>

【次ページ】 15人制日本代表の座と9月のW杯を見据える山田。

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