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「岸ロス」乗り越えた西武先発陣。
野上亮磨と十亀剣はCSでも頼れる。
posted2017/10/10 07:00
text by
市川忍Shinobu Ichikawa
photograph by
Kyodo News
「岸さん、いなくなって寂しいですよ」
今シーズン序盤、フリーエージェントで移籍した岸孝之(東北楽天)の話題になると、野上亮磨はぽつりとこう言った。入団から10年、2桁勝利を7シーズン記録しているエースの移籍は、その成績だけを見ても大きな損失だ。しかも人望が厚く、投手陣のリーダー的存在だった岸を失ったことは、ライオンズ投手陣にとって精神的にも痛手だった。
「岸の抜けた穴」「岸ロス」という表現はシーズン開幕前から頻繁にメディアで語られ、野上ら先発投手陣にも質問がぶつけられた。ここ数年、思うような結果を残せていなかった岸以外の先発投手陣にとっては、自分たちに注がれる厳しい視線や、期待の大きさが、おそらく重いプレッシャーとなってのし掛かったのではないだろうか。
しかし、ライオンズ先発陣は“岸ロス”を乗り越えた。
レギュラーシーズンを2位で終えたライオンズは、先発の野上が自身4年ぶりの2桁勝利となる11勝を挙げ、9月23日にはプロ入り初完封を記録。左のエース、菊池雄星は自己最多の16勝を挙げてパ・リーグの最優秀防御率投手をほぼ手中に収めている(10月5日現在)。同じく先発の十亀剣も先発ローテーションの一角として8勝を挙げた。十亀は8月に腰の張りで一時、登録を抹消されたが、野上と菊池は年間を通じてローテーションを守り、ライオンズのクライマックスシリーズ進出の原動力となった。
炭谷は野上の充実ぶりをキャンプから感じていた。
捕手の炭谷銀仁朗がレギュラーシーズン中に語っていた。
「今年は岸さんがいない分、誰か1人がその穴を埋めるというのではなく、投手陣全員が一丸となってなんとかしようというムードを感じています。特に野上はキャンプで、ピッチング練習中に例年より多くストレートを投げ込んでいる印象がありました。今年はストレートに威力がありますよね」
球威を取り戻したストレートのおかげで、野上の武器であるチェンジアップや今シーズン、多投するようになったフォークボールで効果的に打者を打ち取っている。