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高さ以前に、日本は技術が足りない。
中田久美が開始したバレー観の革命。
posted2017/07/04 11:00
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph by
Atsushi Hashimoto
全体が見える場所で静かに、練習を見守る。
口を開くのは2、3回あるかないか。おそらく世間が抱くであろうイメージとは真逆の姿で、全日本女子バレーボールチームの中田久美新監督は立っていた。
動の人、ではなく、静の人。だが、内側では常に炎が燃え続けている。
「昨日、叱ったんです。あまりにも普通に練習をこなしていたので。ここは戦う場所だと」
2020年に伝説に残るようなチームにしたい。
始動会見で中田監督が発した、その言葉と共にスタートした新生女子全日本。東京五輪での金メダル獲得、そのために発足初年度となる今季は8月に開催されるアジア選手権で優勝し、アジアナンバーワンのチームになることを目標に掲げた。
リオデジャネイロ五輪で優勝した中国を筆頭に、韓国、タイ、カザフスタンなどタイプの異なる強豪が揃うアジアに勝つ。さらには3年後の大舞台で世界の頂点に立つために中田監督が「最も重点を置く」という技術面の課題が、レセプションからの攻撃力向上だ。
近年は女子バレーも男子バレーと同様に、サイドアウト(相手サーブ時に点を取ってサーブ権を取り戻すこと)よりもサーブからのブレイク(サーブ側が得点すること)をどう取るかをテーマとして掲げるチームが少なくない中、あえてレセプションからの攻撃力向上を課題にした。
レシーブが上手くいっても、点につながらない。
そこには1つの理由があると言う。
「リオ五輪の結果を検証したら、レセプションアタックのAパスからの効果率が下から2番目でした。セッターにきっちりパスが返っているにも関わらず点が取れない。じゃあ何をもって点数を取りに行くのか、というところに疑問を感じたんです。どうして点数につながらないのか。コンビミスなのか、スパイカー陣の技術不足なのか。確実に点数を取るためのスキルやテクニックを身につけるという面も含めて、レセプションアタックの決定率、効果率を上げるというのを、まず取り組むべき課題として明確にしました」