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高校野球の敬遠はとかく物議を醸す。
「清宮に回す敬遠」の2つの問題。 

text by

中村計

中村計Kei Nakamura

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photograph byNIKKAN SPORTS

posted2017/05/15 17:00

清宮幸太郎は、打席に入る前に捕手に対して何かを話しかけていた。その背中は、見たことがないほどに怒っていた。

清宮幸太郎は、打席に入る前に捕手に対して何かを話しかけていた。その背中は、見たことがないほどに怒っていた。

相手への敬意と「ファンのために」の意味。

 このシーンは、2つの問題を投げかけている。相手に対する敬意と、「ファンのために」とは何なのか、だ。

 確かにファンは盛り上がっていた。地元で放送されたテレビの解説者も、野球界全体を思う判断ととらえ、鍛治舎監督の采配を「すばらしいと思います」と評価した。ただ、早実の選手たちの「出待ち」をしていたファンに話を聞くと、意外なほど冷静だった。

「嬉しかったですけど、早実の選手たちがどう思っていたのか……。スタンドの人たちも、喜んではいましたけど、複雑な思いの方が強かったんじゃないですか」(姫野幸樹さん・28歳)

「招待試合の位置づけが、どこにあるのかでしょうね。公式戦だったら許せないですけど、親善試合という意味合いなら、7-3くらいでありかな。でも、両方の気持ちがありますよ」(渡邊博志さん・43歳)

「お客さんは、そら喜ぶよ。客は喜ぶけど、2番バッターが、かわいそかですたい」(60代男性)

「僕も野球をやってたんで、あれはダメかな、と思いましたね。バックネット裏で観てたんですけど、早実ベンチはざわついてましたから」(里川啓太さん・26歳)

 おそらくスタンドで見ていたファンは、早実サイドの不穏な空気も敏感に感じ取っていたのだろう。

敬遠は、とかく物議をかもす。

 高校生で、清宮ほどファンの注目を集め、また、それを受け止めている選手もいない。前日の招待試合は2試合行い、1試合目は4四死球と見せ場がなかった。2試合目にホームランが出ると「熊本で打てて、ホッとした」と胸をなでおろした。

 しかし、秀岳館戦後のあの態度は、彼が考える「ファンのために」とは、そういうことではないのだと主張していた。

 敬遠は、とかく物議をかもす。古くは、1992年夏の甲子園で起きた松井秀喜の伝説の5打席連続敬遠があった。野球ならではの独特のルールの解釈によって、また、2つの野球観が衝突した。

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