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横山典「もうひとつあるように感じる」
3歳マイル女王の本当のスケール。
posted2017/05/08 11:20
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph by
Yuji Takahashi
やっぱり今年の3歳牝馬は強かった。
3歳のマイル王を決める第22回NHKマイルカップ(5月7日、東京芝1600m、3歳GI)を勝ったのは、横山典弘が騎乗した2番人気の牝馬アエロリット(父クロフネ、美浦・菊沢隆徳厩舎)だった。2着も牝馬のリエノテソーロ。牝馬によるワンツーフィニッシュは、2005年のラインクラフト-デアリングハート以来、レース史上2度目のことだった。
16番枠からメンバー中一番の速さでゲートを出たアエロリットは、そのまま先行し、馬群の外目を抜群の手応えで進んだ。
手綱を引っ張り切りのまま4コーナーで先頭に並びかけ、直線へ。ラスト400m地点で横山がゴーサインを出すと力強く抜け出し、1馬身半差の勝利をおさめた。
「返し馬で、状態がすごくいいことがわかった。駆け引きなしで、馬の全能力を出せば勝てると思いました」と横山。
ラスト200mでひと伸びするのは、超一流馬だけの能力。
牝馬にこの言葉を使うことはそう多くないのだが、まさに「横綱相撲」だった。
それも、レースレコードにコンマ1秒まで迫る1分32秒3という速いタイムでの決着だけに価値がある。ウオッカやダイワスカーレットが活躍し、同じように「3歳牝馬が強い」と言われた2007年も時計の裏付けがあった。
もうひとつ驚かされたのは、ラスト200mを切って2着馬に外から来られたら、手前を左に替えて、もうひと伸びしたことだ。
こういう走りは、「超」のつく一流馬にしかできない。左右の回りも牝牡も違うが、かつて、ステイゴールドが2001年の香港ヴァーズでGI初制覇を果たしたときも、同じようなシーンが見られた。直線で伸びが鈍りかけたとき、手前を替えて馬場の真ん中に持ち出したら鋭く伸びて、差し切った。鞍上の武豊は「羽が生えて飛びました」とコメントしたのだが、彼がディープインパクトに乗る前、サラブレッドの走りを「飛んだ」と表現したのは、筆者が聞いた限りでは、それが初めてのことだった。