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秀岳館の監督は大阪桐蔭に屈さず。
「褒めちぎらないとだめですか?」
posted2017/03/30 18:30
text by
中村計Kei Nakamura
photograph by
Kyodo News
一見、温厚な紳士に見えるが、恰幅のいい体内には負けん気が充満していて、それがあふれ出すことがある。
29日、健大高崎(群馬)を9-2で破り、準決勝進出を決めた秀岳館(熊本)の監督・鍛治舎巧は、お立ち台に上がるなり、ぎょろりとした目を爛々とさせ、言った。
「明日は、二度あることは三度あるのか、三度目の正直になるのか」
気持ちはもう翌日の準決勝に向かっていて、アナウンサーに、まずは今日の試合を振り返って欲しいとお願いされる一幕もあった。
昨年鍛治舎は、監督就任からわずか2年で、チームを春夏連続で全国4強入りに導いた。しかし、いずれも準決勝で涙をのんだ。その理由をこう語った。
「先を見てしまった。高校野球の解説を25年もやってわかっていたのに、自分のことになると見えなくなるんですね~。先を見た監督は100パー、負けてます」
高松商業、北海と伏兵に敗れた理由。
昨春の選抜大会・準決勝の相手は、高松商業(香川)だった。高松商業は準々決勝で海星(長崎)を17-8で下した。一方、秀岳館は、2015年の秋季九州大会の決勝で、海星に13-2で快勝していた。
「海星が8点とれるんだから、うちもそれくらいは取れると安易に考えてしまった」
結果、2-4で惜敗する。
夏の準決勝の相手は北海(南北海道)だった。準決勝の第1試合では作新学院(栃木)がすでに決勝進出を決めていた。
「作新学院は優勝候補だと思ってましたから。この夏は、われわれの敵は作新学院だってずっと選手に言ってたんです。それで、よし、これで作新と当たれる……と、口にはしなかったけど、心の中で思ってました。思っただけでもダメなんです」
結果、3-4でまたしても惜敗。