錦織圭、頂への挑戦BACK NUMBER
グランドスラムのために、今休む。
錦織圭が2月に南米へ飛ぶ理由。
posted2017/02/12 11:30
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph by
Hiromasa Mano
全豪オープンで錦織圭がロジャー・フェデラーに敗れたのは大会中日の日曜日だったから、そろそろ3週間になろうとしている。
それだけで、随分試合を見ていないような気がするファンも多いのではないだろうか。
無理もない。昨年の錦織がシーズン中に3週間も試合をしなかったのは、ウィンブルドンとトロントでのカナダ・マスターズの間だけだった。ここでデビスカップに出場していたら、去年同様にシーズン前半でゆっくり休めるタイミングをどこにも見つけられなかっただろう。
他のトッププレーヤーのデビスカップ出場状況を見ても、トップ20の中で今回試合のない国の選手2人を除く18人のうち、出場したのはわずか5人。トップ10ではノバク・ジョコビッチただ1人だった。アンディ・マレーもフェデラーもスタン・ワウリンカもラファエル・ナダルもミロシュ・ラオニッチもマリン・チリッチも、皆出場を見送った。
ツアーファイナルズやデビスカップの決勝を戦うトッププレーヤーにとって、シーズンオフは1カ月もない。しかもシーズン明けにすぐ全豪があるため、ゆっくり休んでもいられない現状を受けて、全豪が終わって一区切りという考え方が広まっている。昨年マレーは全豪のあと1カ月近く試合に出ず、ジョコビッチも3週間休んだ。昨年は3月初めに開催されたデ杯が、今年は全豪の翌週になったことが、多くのトッププレーヤーにそっぽを向かれることになった一因と考えられる。
連日満員のスタンドを見るにつけ、錦織の負担を思う。
蒸し返すようだが、有明コロシアムでの対フランス戦は、錦織不在でワールドグループを戦う限界を見るようだった。
来日したレキップ紙のベテラン記者は言っていた。
「錦織がいれば何かが起こった可能性はある。だから楽しみだったんだ。でも錦織がいなくては、何も起こるはずがない」
連日ほぼ満員だったスタンドを目の当たりにし、錦織が背負っているものの大きさを知る思いでもあった。こうなることを知っていたはずの錦織の決断もまた、大変なものだっただろう。錦織がメンバー発表の10日も前に欠場を知らせたのは、ファンへのせめてもの誠意だったようにも思う。