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青学の存在で、優勝を信じられない?
早稲田がハマった「追う者の弱み」。
posted2017/01/12 07:00
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph by
Takuya Sugiyama
本来であれば、早稲田は往路で勝っていなければいけなかった――。
1月3日の閉会式会場で、早大の相楽豊監督と話した末の結論である。
もしも往路で勝っていれば、復路では少なくとも8区までは青学大と競った形でレースが展開できたはずだった。
「どうも、往路からうまく流れに乗り切れませんでした」
それが相楽監督の思いである。
往路を振り返ってみよう。
苦心のオーダーとなった青学大に比べ、実力があり、安定感を誇る4年生を投入した早大は勝つチャンスが十分にあった。ただし、細かな誤算が続いてしまった。
ポイントは1区にあった。
1区という区間はつくづく難しい。シミュレーションする時間はたっぷりあるのだが、レースが始まってみると、それが役に立たない場合が多い。今回の1区も想定しづらいシナリオ展開になった。
常に冷静な武田凛太郎(4年)だが、当初、早めに主導権を握ると予想されていた服部弾馬(東洋大)が仕掛けどころを逸した影響で、スローペースに巻き込まれてしまった。武田もしかけるまでには至らず、こうなると牽制のし合いで中継点まで行くパターンになってしまう。結果、青学大に先着したものの、差はわずか1秒だった。
2区のスタートが青学のエースと同時では……。
振り返ってみると、1区で「それなりのリード」を奪えなかったことが、後々に響いたと思われる。
もしも、スローペースになっていなければ、青学大の梶谷瑠哉と武田の差はもっとついたかもしれない。この想定外の1区が、後続に微妙な影響を与えたのだ。
2区は期待の永山博基(2年)。区間10位という数字だけを見れば物足りないが、1時間8分50秒のタイムは、過去の早大基準に照らし合わせれば悪くない。ただ、青学大のエース一色恭志と同時スタートとなってしまっては荷が重かった。2区終了時点で早大と青学大の差は53秒にまで開いた。