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則本昂大、3年連続ミスターKの球質。
マー君から引継ぎ損ねている物は?

posted2016/12/27 07:00

 
則本昂大、3年連続ミスターKの球質。マー君から引継ぎ損ねている物は?<Number Web> photograph by Kyodo News

新人から4年連続で2ケタ勝利、しかし敗戦も3年連続で2ケタに乗っている。則本が絶対エースになるためには、勝率の向上が求められている。

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安倍昌彦

安倍昌彦Masahiko Abe

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 朝の8時からピッチングを始めるといわれて、その日は4時に起きた。

 4時に起きて、泊まっていたホテルの周辺を1時間ほど歩いて目を覚まし、部屋に戻ってさらに1時間、朝のニュースをテレビで見ながらストレッチ。体と頭を覚まそうとした。

 三重中京大のグラウンドに着いたのが7時。

 選手のほとんどが、もうアップを始めていた。そうはいっても、外野の芝生に20人ほど。春のリーグ戦たけなわの時期にしては、なんともさみしいグラウンドの風景だった。

 その時、三重中京大は“最後の1年”を迎えていた。翌年の3月をもって廃校。すでにそのシナリオは何年も前から決まっていた。大学は3年前から新入生を募集していなかったから、部員は全員が“4年生”だった。

 エース・則本昂大という快速球右腕は、地元では“敵なし”の存在だった。

 2年の春からエース格で投げ始めると、三重の大学野球リーグでは無敵の全勝街道を突っ走った。リーグのレベルが……と信用しない人もいたが、冗談じゃない、いやしくも同じ大学生との真剣勝負で33連勝のコンスタントな実績は、十分に怪物と評してよい。しかも、そのほとんどが先発・完封。

 間違えてはいけない、先発・完投じゃない。登板のほとんどが“先発・完封”だった。

「日本の誰にも負けないと思ってますから、自分」

「自分には、長谷川っていうライバルがいるんで、それでここまで伸びてこられました。あいつは三重高って名門の出身だし、高校時代から注目されていた。どっちもない自分と違って、ピッチングのすべてが上でしたから、入った頃は。今でも、ピッチャーとしての総合力なら、自分以上じゃないですか」

 同期の長谷川亮佑(現・ヤマハ)は、スライダー回転のクセの強い速球と多彩な変化球で、打者の手を焼かせるサウスポーだ。

「でもスピードだったら、長谷川にも、ほかの日本じゅうの大学のピッチャーの誰にも負けてないと思ってますから、自分」

 中央大に鍵谷陽平(現・日本ハム)、慶應義塾大に福谷浩司(現・中日)、法政大に三嶋一輝(現・DeNA)、当時はまだ無名だったが、創価大には小川泰弘(現・ヤクルト)。のちに、プロに進んで活躍するスピード自慢が学生球界に何人もいた年だ。

 それでも、則本昂大の切れ長の目はギラリと光っていた。

【次ページ】 何球捕ってもミットを止められない快速球。

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