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青学に“詰めろ”をかけた早稲田。
全日本の健闘は箱根への伏線か。
posted2016/11/07 17:00
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph by
Kyodo News
早稲田大学のアンカー、安井雄一が2位でゴールに飛び込む。安井を出迎えた相楽豊監督の目は潤んでいた。
11月6日に行われた全日本大学駅伝。青山学院大が初優勝し、これで“三冠”に王手をかけた。
そして、この全日本を青学大とともに盛り上げたのは早稲田大学だった。とにかく、青学大に冷や汗をかかせることに成功したのだ。
早大は1区の武田凛太郎が東洋大に次ぐ区間2位、青学大よりも19秒前でタスキをつなぐ。2区は主将の平和真が青学大の田村和希とつばぜり合いを演じ、わずか1秒差で3区へ。ここで鈴木洋平(4年、新居浜西高)が先頭に立ち、4区の永山博基(2年、鹿児島実業)が青学大との差を1分7秒にまで広げた。
5区に入ってから、青学大の原晋監督はこう話していた。
「8区の一色(恭志)にタスキが渡るまでに、早稲田との差が1分半だったら、ワクワクする展開になるんじゃないかな。でも、それ以上は『危険水域』。1分45秒がギリギリでしょう。2分じゃ、無理」
後半に入って、早稲田には将棋用語でいうところの“詰めろ”の筋があったのだ。
5~7区で詰まった18秒の差が影響した。
5区から7区までの、青学大と早大の“区間対決”の結果を見てみよう。
< 5区 >
青学大 小野田 35分07秒
早大 新迫 35分12秒
< 6区 >
青学大 森田 35分39秒
早大 藤原 36分04秒
< 7区 >
青学大 中村 35分17秒
早大 太田 35分05秒
5区では1分7秒差だったが、8区にタスキが渡った時点で、早大のリードは49秒にまで減っていた。
「たられば」の話であるが、この3区間で早大が30秒貯金を上乗せしていたら、青学大にとっては「危険水域」に突入し、最終区はよりスリリングな展開になっていたかもしれない。