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新五輪競技、スポーツクライミング!
15mの壁を6秒で登る超人ぶりに驚く。
posted2016/09/14 07:00
text by
津金壱郎Ichiro Tsugane
photograph by
AFLO
早くもオリンピック効果が表れている。2020年東京オリンピックの実施競技に決まったスポーツクライミングには、新たにKDDIがオフィシャルスポンサーに加わった。メジャー競技への転換点に支援企業が次々と現れるのは、“垂直方向”へ競技力を争う無二のスポーツに大きな可能性を見出しているからだろう。
期待しているのはメディアも同じだ。9月14日からスポーツクライミング界最大のタイトル、2年に1度の世界選手権が開催されるが、この大会に向けた日本代表合同合宿には、25社を超える報道陣が集まった。
これほど多くの人が押しかけたのは、今シーズンのW杯ボルダリングで、男子は楢崎智亜と藤井快が年間王者を争い、女子は野中生萌が年間2位と、男女ともに4年後のメダル獲得の有力候補というのが大きい。だがメダルの期待がかかる日本人選手だけを追っていると、競技の魅力や醍醐味を見落とすことになる。
15mの壁を6秒で登る、という異様な光景。
スポーツクライミングの種目は3つあるが、もっともわかりやすいのが「スピード」だ。高さ15mの人工壁に、まったく同じホールド(選手が掴んで登るための突起物)が配置された同じコースで、2名の選手が同時にスタートしてどちらが速くゴールできるかを競う。
国内にはスピード用人工壁がないため認知度も人気も低いが、ロシアや中国では盛んに行われ、国際大会では大きな歓声に包まれる。コースは国際ルールで定められ、どの国のどんな大会でも同一のものを使用する。難易度は11A(課題の難易度)とトップクライマーにとっては易しめで、スピードに乗りやすいようにホールド間の間隔が遠めに設計されているのが特徴だ。
どれくらいのタイムで登るかというと、現在の世界記録は男子がダニル・ボルドィレフ(ウクライナ)の5秒60。女子がユリア・カプリナ(ロシア)の7秒53。そのスピードたるや、「本当に人間か!」というほど。登るというよりは、駆けあがると表現した方がしっくりくる。
過去に国際大会でスピードに出場経験を持つ国内トップクライマーの杉本怜いわく、「6秒の壁を破ったら、陸上100mを9秒台で走るのと同じくらい凄いことですよ」とのこと。
世界選手権では日本勢のエントリーは男女ともないが、世界記録保持者のボルドィレフ、カプリナは出場する。さらに男子では、非公認ながら世界記録を上回る5秒57のタイムを持つライボー・フローザ(チェコ)もエントリーしている。ボルドィレフとの直接対決が実現したら、どんなタイムが叩き出されるのか興味深い。