リオ五輪PRESSBACK NUMBER
福原愛「傷をえぐるみたいで……」
キム対策を石川に聞かなかった理由。
posted2016/08/11 14:00
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
JMPA
必死に涙をこらえていた。涙がこぼれそうになるのを、抑えようと努めていた。
オリンピック4度目の出場で初めてベスト4に進出した福原愛は、8月10日の午前10時から行われた準決勝で、ロンドン五輪金メダリストの李暁霞(中国)に0-4で敗北した。
午後8時30分からの3位決定戦では、石川佳純が初戦で敗れたキム・ソンイ(朝鮮民主主義人民共和国)と、銅メダルをかけて戦うことになった。
試合を前に、懸念はあった。
キムは、福原が苦手としてきたカットマン(ボールにバックスピンをかけて打ち返して相手のミスを狙い、チャンスと見ればスマッシュなどを狙う)であること。しかも、過去一度も対戦経験のない選手であること。他競技でもよくあるが、北朝鮮の選手は国際大会にあまり出場していないため、分析の材料が多くない。
得意な戦型の選手が相手であれば、対戦経験がなくても試合中に素早く対応できるが、苦手なタイプに対しては、通常以上に遅くなりがちだ。
「これまでにない」練習の成果は出ていたが……。
試合が始まる。
第1ゲームから、キムはカットマンらしくバックスピンのかかったボールで福原の強打を返し続ける。福原も粘り強く打ち合おうとしたが、チャンスボールを与えて強打を許したり、ネットにかけたり、スマッシュを狙いに行ってミスが出たり、と中盤からリードを許す展開となる。
第1ゲームを7-11で落とし、第2ゲームも7-11。流れを食い止めたかった第3ゲームも中盤にミスが相次ぎ、5-11。
第4ゲームは14-12でなんとか奪ったが、第5ゲームは力尽きて5-11。競り合う展開に持ち込むことができずに敗れ去った。
今大会、初戦から準々決勝まですべて4-0で勝利してきたことが象徴するように、福原の調子は上々だった。「これまでにない」と語るほど積んできた大会前練習の成果は出ていたのだ。それだけに、悔しさは大きいものになる。
「みんな強くて、1戦1戦勝つのが難しいのがオリンピックです。ベスト4に入って、決定戦で勝つことができなくてものすごく悔しいです」