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甲子園は「いかに負けるか」である。
高川学園・山野が履正社に投じた109球。

posted2016/08/13 07:00

 
甲子園は「いかに負けるか」である。高川学園・山野が履正社に投じた109球。<Number Web> photograph by Kyodo News

圧倒的不利という下馬評を覆すことはできなかったが、高川学園・山野は明らかに大会屈指の投手だった。

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安倍昌彦

安倍昌彦Masahiko Abe

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Kyodo News

 甲子園大会が始まった。

 第98回大会、再来年は100回大会。“甲子園”の歴史も100年を超えた。

 全国各地の大会を勝ち抜いて甲子園に歩を進めてきた参加49校。予選を無敗でくぐり抜けてきたチームも、このひのき舞台では最後に残る1校以外、すべて“敗戦”という洗礼を受ける。

 勝負には勝ち方があるように、その対極には必ず“負け方”というものがあり、頂点に登る1校以外に平等にやってくるその時に、果たして「どう負けるのか」、そこでチームの真価が問われるといってもよいのではないだろうか。

 最高の負け方。持てる力をすべて発揮して、尚、力及ばず。

 今年は、そんな見事なピリオドの打ち方を見せてくれたチーム、選手を、甲子園の現場からお伝えしたい。

巨象・履正社を倒すことを期待した高川学園。

 組み合わせ発表があった日。

 人に問われて、「面白い!」と答えた顔合わせの1つに、「履正社(大阪)vs.高川学園(山口)」があった。

 選手たちの圧倒的な力量を武器に、激戦・大阪で相手チームを蹴散らすように危なげなく勝ち上がった履正社。

 横浜と共に、今大会の“両横綱”に挙げられている強豪である。

 対して、初出場の高川学園高。旧称・多々良学園といえば、高校サッカーの名門として名高いが、今の校名になってから高校野球では無名のままだ。

 なにが「面白い!」のか? と笑って返されたりもしたが、伝統になりつつあるスピードあふれる走塁と、快速左腕・山野太一の奮投があれば……。

 巨象を倒すのは、意外とこうしたカラーのチームなのさ、と少なからず期待をかけていた。

【次ページ】 履正社の寺島成輝は、打者に劣等感を持たせる存在感。

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寺島成輝
石井一久
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