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中川誠一郎(リオ五輪 自転車スプリント日本代表)
「バンクに込めた震災復興への思い」

posted2016/07/28 10:00

 
中川誠一郎(リオ五輪 自転車スプリント日本代表)「バンクに込めた震災復興への思い」<Number Web> photograph by Tetsuya Ito

text by

石井宏美

石井宏美Hiromi Ishii

PROFILE

photograph by

Tetsuya Ito

この夏、リオのバンクを駆ける3選手に注目する短期集中連載「Keep Trying」。
故郷・熊本を襲った大地震。37歳のベテランが被災地への思いをパワーに変え、
2度目の五輪へ向かう――自転車スプリント日本代表、中川誠一郎選手です。

 4月14日の夜。合宿のため滞在していた川崎で食事をしていると、突然、携帯電話に着信やメールが相次いだ。故郷・熊本が大地震に見舞われたのだ。翌日深夜、大会出場のため滞在していた静岡で、再び震度7の報に接する。中川誠一郎は欠場を決め、すぐに熊本市内の自宅へと向かった。空路が遮断されていたため、福岡を経由。先輩の車でようやく帰路につくことができた。

「建物自体の倒壊は免れたんですが、自宅の中はめちゃくちゃでした」

 ホームバンクの熊本競輪場も大きな被害を受けた。バンク全体がひび割れし、特観席の窓は破損。現在もなお、レースでは使用不可能な状態となっている。

「言葉が出なかったですね。ショックだったし、こんなにも大きな地震だったのかとあらためて痛感した瞬間でした」

「リオでも全身全霊で挑む姿を見せたい」

 余震が続く中、中川も自宅の片づけなど作業に追われた。大きなレースを控え、トレーニングを再開したものの、多くの被災者が不安な生活を余儀なくされ、復興に向け同じ競輪選手もボランティア活動に励む姿に「自分は自転車に乗っていていいのだろうか」という気持ちにも苛まれた。

 しかし、非常事態だからこそ、自分にしかできないことをするべきだと考えた。

「バンクを走る姿を見て、熊本の方、ファンの方たちが少しでも震災のことを忘れ、元気になってくれたらうれしい。僕ができることは走ることしかない」

 その強い思いが、5月の日本選手権競輪での悲願のGI初Vにも繋がった。

「常に全力で挑むスタイルは変わらない。リオでも全身全霊で挑む姿を見せたいですね。出場するからにはメダルを狙います!」

 ロンドンに続き2度目となるリオ五輪。37歳のベテランが、この夏、復興を目指す故郷に最高のエールを届ける。

中川誠一郎Seiichiro Nakagawa

1979年6月7日、熊本県生まれ。'12年ロンドン五輪で男子チームスプリント8位、男子スプリント9位。熊本地震被災地支援競輪として開催された5月の第70回日本選手権競輪で悲願のGI初戴冠を果たした。174cm、78kg。

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