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手倉森監督が辿り着いた「黄金比率」。
なぜFWを削り、後ろを厚くしたか。 

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戸塚啓

戸塚啓Kei Totsuka

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posted2016/07/01 17:10

手倉森監督が辿り着いた「黄金比率」。なぜFWを削り、後ろを厚くしたか。<Number Web> photograph by AFLO

メンバー中最年少でリオ行きを決めた19歳のボランチ、井手口陽介。手倉森監督の選択が光る場面が来る予感がする。

W杯で確信した「派手に勝つ必要はない」。

 メンバー発表の会見で、指揮官は「日本の強みは何かと考えたら、おそらく速さだなと。そこを考慮してメンバー選考をした」と話した。指揮官の構想を裏付けたのは、'14年のブラジルW杯である。ザックことアルベルト・ザッケローニが率いた日本代表のゲームを含め、現地ブラジルでW杯を視察した手倉森監督は、「派手に勝つ必要はない」との思いを強めた。

「ブラジルW杯で世界を驚かせた国、たとえばチリやアルジェリアは、マイボールとした瞬間に相手ゴールへ向かっていくサッカーをやっていた。ポゼッションができたから評価されたわけではない。日本もポゼッションをやりつつ、堅守速攻も、遅攻も、すべて取り込まなきゃいけない」

 スピーディな攻撃を実現するには、スイッチ役が必要だ。ワンタッチのタテパスに秀でる遠藤に加え、ここにきて攻撃の意欲を増している大島、パスの出し入れができる原川を揃えることで、手倉森監督は攻撃をスピードに乗せる環境を万全のものとしたのだ。

「攻撃的にいけるか」と繰り返した自問自答。

 そのうえで、手倉森監督は「五輪本大会で、果たして攻撃的にやれるのか」との自問自答を繰り返してきた。辿り着いた結論は、「押し込まれて、守らないといけない状況が続く大会になると6割がた思っている」というものだった。

「サイドバック、センターバック、ボランチを厚くするためにも、ボランチを4枚にした。遠藤は後ろもできるし、塩谷はサイドもできる。後ろを万全にしておきたかった」

 押し込まれることも想定した戦略では、DFやボランチの出場停止も想定しておかなければならない。ノックアウトステージまで視野へ入れれば、連戦による疲労も気になる。指揮官が言及した遠藤と塩谷だけでなく、緊急時には井手口も最終ラインでプレーできる。ディフェンスのセーフティネットは、メダル獲得に欠かせないものだったのだ。

【次ページ】 堅守速攻は、そもそも手倉森監督の得意技。

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