炎の一筆入魂BACK NUMBER
広島快進撃の裏に、この人あり。
赤松真人は絶対に欠かせぬ“代走”。
posted2016/06/24 11:00
text by
前原淳Jun Maehara
photograph by
NIKKAN SPORTS
野球は先発選手だけの力で勝敗を決めるものではない。
全員がエースでも、全員が4番でも勝てるとは限らない。
特に個々の大物外国人選手やFA選手での戦力補強を行わない広島にとって、ベンチ入り25人の総力を結集しなければ、長く厳しいペナントレースは戦えない。
折り返しまで首位を快走。チーム力の結晶が好結果を生んでいる。
控え選手として欠かせない選手がいる。代走の切り札として存在感が際立つ、赤松真人だ。
前回の先発出場は、'14年8月9日阪神戦まで遡る。緒方政権下での先発起用はまだ1試合もない。今季も交流戦が終了した6月19日まで、出場43試合はすべて途中出場。先発出場は1度もない。そのうち半数以上の27試合が代走での出場となっている。
だが、1点が試合を左右する試合終盤に、赤松のスピードが大きな武器となる。僅差の終盤、相手の投手のレベルは上がり、クイックスピード、けん制の技量も上がる。当然、1球に対する重圧も増す。
だが、赤松は主戦場を代走とした'12年以降、相手が警戒心を高める中でも70%前後の盗塁成功率を記録してきた('13年.750、'14年.706、'15年.667)。今季は6月15日の西武戦で、11度目の企図で初失敗となるまで、100%の成功率だった。
河田コーチ「あの年齢であれだけのスピードはすごい」
「ベースに滑るという意識はない。ベースを蹴る感覚」というスライディングは、実際に映像を見ると尻が地面にほとんど着いていない。スピードが緩まず、足先がベースに着く直前までトップスピードを維持できている。際どいタイミングもセーフに見えてしまう。俗に「立ちスラ」という技術は、菊池涼介や丸佳浩も憧れる技なのだ。
スピードには阪神入団時から定評があった。当時の盗塁王、赤星の後継者と期待されていた。スピードだけで、抑制が利かないのは思考も同じだったかもしれない。凡ミスが目立ち、“バカ松”と揶揄されたこともあった。だが、今は違う。スピードだけではない。
年齢と経験を重ね、そしてプロで生き抜く技を磨いた。西武時代に4度最多盗塁を記録した片岡易之らを指導した河田雄祐外野守備走塁コーチもその力を認める。
「あの年齢であれだけのスピードはすごい。そして研究熱心。ベンチでも菊池や丸らが聞いているみたいだしね」