Number ExBACK NUMBER
高橋尚子と野口みずきが初対談。
スクープ企画の舞台裏と動画公開!
posted2016/06/03 11:30
text by
Number編集部Sports Graphic Number
photograph by
Asami Enomoto
雑誌Number903号より、その取材の舞台裏と取材動画を特別公開いたします。
抱えていた思いが溢れ出した。対談が始まって5分、野口さんの目に涙が浮かんだ。自らの引退レース後、高橋さんと抱き合った場面について、話していた時だった。
「やっぱり、みずきちゃんは私にとって特別な存在なんだよね」
高橋さんにこう言われると、野口さんが目頭を押さえた。
「ウルッときちゃった」
高橋さんもそう言って、涙を拭った。
2人の「心の距離」はこれほど近かったのか――。対談に立ち会いながら、改めて思い知らされた。
高橋尚子と野口みずきの対談は……実現可能なのか?
高橋さんと野口さんの対談をやろう。編集部内で企画が動き出したのは4月だった。日本人女性選手として陸上競技で金メダルを獲得したのは2人しかいない。可愛らしくも、ビッグな対談だ。
両者サイドに打診してから1カ月後、スケジュールをすり合わせて、実現が決まった。
そもそもは今年3月、野口さんが引退レース後、競技場の裏で高橋さんに向けて伝えた言葉が、対談企画の発端であり、核心でもあった。
「私、高橋さんに言いたいことがあるんです。ずっと選手の時には言えなかったんですけど……。高橋さんに憧れることができたから金メダルも取れたし、日本記録も出せました。ありがとうございました」
ライバルと言われてきた2人のつながりが表面化したシーンだった。だが、小さな不安もあった。長年、マラソン界のトップを走ってきたアスリート同士、例えば、2004年のアテネ五輪へ向けての選考レースでは紛れもなくライバルだった。事実、当時は1人が笑い、1人が泣く結末になった。現役中は2人の良好な関係が表に出ることもほとんどなかった。本当にお互いへの気持ちを語ってもらえるのだろうか。そんな思いを抱いたまま、当日を迎えた。