ぼくらのプロレス(再)入門BACK NUMBER
「全てが日本仕様」の満点スタート。
中邑真輔のWWEデビューは前代未聞。
posted2016/04/20 10:30
text by
堀江ガンツGantz Horie
photograph by
WWE
元・新日本プロレスのスターレスラー中邑真輔が、4月1日にアメリカ・テキサス州ダラスで開催されたWWE・NXT『テイクオーバー:ダラス』で、ついに世界最大のプロレス団体WWEデビューをはたした。
サミ・ゼインを20分8秒、キンシャサ(ボマイェから改称)からの片エビ固めで破ったこの一戦は、中邑の入場時から大歓声が起こり、おなじみのエビ反りポーズを始め、中邑のムーブひとつひとつに大きなリアクションが起こった。
試合内容も、ハードヒットで死力を尽くして闘う日本スタイルの激闘。それに対してファンは、「Holy Shit!!」「This is awesome!!」と最大限の賛辞を送り、最後はスタンディングオベーションに包まれた。まさに満点デビューだ。
我らが中邑真輔が、そして我々が長年愛した日本のプロレススタイルが、いまWWEの観客を熱狂させている。その試合を『WWEネットワーク』という定額課金制動画サービスによって、PCやスマホ、タブレットで、休日昼間にリアルタイムで観るというこれまでになかった体験も含め、歴史的瞬間を目撃したような感動と興奮を多くの日本のファンが味わったことだろう。
中邑は、日本のスタイルそのままにWWEに登場した。
今回のWWEデビュー戦、最も特筆すべき点は、中邑が完全なる「日本仕様」で登場したことだ。
通常WWE入りしたレスラーは、リングネーム、コスチューム、そして自身のパーソナリティであるキャラクターまで、WWEの世界観に合ったものにほぼすべて変えられる。近年で言うと、新日本のトップガイジンとして活躍したプリンス・デヴィットはフィン・ベイラーに、プロレスリング・ノアのエースだったKENTAはヒデオ・イタミにそれぞれ改名。WWE製のレスラーに“生まれ変わった”。
ところが中邑のリングネームは、「シンスケ・ナカムラ」。赤を基調としたコスチューム、そしてファイトスタイルやフィニッシュホールドにいたるまで、新日本での中邑真輔そのままでWWEに登場した。
早速発売されたシンスケ・ナカムラのTシャツには、「STRONG STYLE HAS ARRIVED(ストロングスタイルがやってきた!)」の文字が大きく書かれていた。
ここでいう「ストロングスタイル」とは、中邑真輔のファイトスタイルだけを指すのではなく、新日本プロレスのスタイル、いやジャパニーズスタイルのプロレスそのものを象徴して使われているのだろう。
シンスケ・ナカムラのデビューは、WWEに「日本のプロレス」が大々的に直輸入された初のケースとして、じつは画期的なことなのだ。