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桜花賞馬ジュエラーは「ぼくの家族」。
デムーロが果たした3世代GI制覇。

posted2016/04/11 11:10

 
桜花賞馬ジュエラーは「ぼくの家族」。デムーロが果たした3世代GI制覇。<Number Web> photograph by Yuji Takahashi

ジュエラーとシンハライトの差は2cmだったという。スタートから焦らず、瞬発力勝負に持ち込んだことが功を奏した。

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島田明宏

島田明宏Akihiro Shimada

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photograph by

Yuji Takahashi

 やはり、競馬に「絶対」はないのか。

 牝馬クラシックの第一弾、第76回桜花賞(4月10日、阪神芝外回り1600m、3歳牝馬GI)で、「絶対女王」と目され単勝1.5倍の圧倒的1番人気に支持されたメジャーエンブレムは4着に敗れた。勝ったのは3番人気のジュエラー(父ヴィクトワールピサ、栗東・藤岡健一厩舎)、鼻差の2着は2番人気のシンハライト。人気馬が上位に来たので「波乱」と言うべきではないのだろうが、女王の強さに酔いしれようとしていた多くのファンにとっては、残念な「サプライズ」となった。

 スピードの違いでハナに立つか、悪くても2、3番手につけると思われたメジャーエンブレムは、他馬に前に入られたことも響いたのか、道中は5、6番手を進んだ。

 スタートそのものが遅かったし、騎乗したクリストフ・ルメールによると、いつものパワーも感じられなかったという。

 他馬に囲まれた窮屈な状態で3、4コーナーを回る形を本番で初めて経験することになった時点で、勝敗は決したと言っていい。

 本来なら、直線に入った時点で後ろを引き離し、瞬発力を武器とする馬たちが差を詰めてきたときにはゴールしている、というのがこの馬の「絶対」の形だ。しかし今回は、直線で馬群をこじ開けたときには、外から進出してきたシンハライトらに並びかけられており、ヨーイドンで一緒にスパートする格好になった。ワンペースのロングスパートで後続を封じる得意の競馬とは対照的な、非常に厳しい展開だ。

「切れ負け」するのはわかっているのに、切れ味で勝負せざるを得なくなった。自身もジリジリと伸びてはいたのだが、ジュエラー、シンハライトといった、より切れる馬たちに屈してしまった。

前半をもう少し飛ばしてもよかったのでは……。

 勝ちタイムは1分33秒4。上がり3ハロンのタイムは、勝ったジュエラーが33秒0、2着シンハライトが33秒7、3着アットザシーサイドが33秒9、そして4着のメジャーエンブレムが34秒2。メジャーエンブレムは最初の5ハロンを59秒6で通過したわけだが、この馬なら、そこをもう1秒速く通過したとしても、同じぐらいの末脚でラスト3ハロンをまとめていたはずだ。

 途中から、やや強引になっても押し上げていれば(つまり、自分の競馬をしていれば)たとえ同じ結果だったとしても、後味の悪さは残らなかったのではないか。まあ、しかし、こうしたタラレバはいくら言っても結果論になるので、このくらいにしたい。

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