野球場に散らばった余談としてBACK NUMBER
若虎の未来は本塁打王か、盗塁王か!?
横田慎太郎の底知れぬ成長曲線。
posted2016/04/06 10:40
text by
酒井俊作Shunsaku Sakai
photograph by
Naoya Sanuki
「最敬礼」、「破竹の進撃」、「ニヤリとする」……。
スポーツ新聞の記事に登場する、いわゆるギョーカイ用語である。野球記者になって間もない頃、デスクからよく指摘された。
「使い古された表現をあまり使うな」
そう教わってきたから自分の言葉で書こうとするが、どうしても型にハマるフレーズを使ってしまう。
だから、時折、野球人の表現力の豊かさにハッとさせられる。先日も思わず膝を打った。阪神の片岡篤史打撃コーチが「かたやサラブレッドで、かたや地方競馬上がりやろ。好対照の2人が刺激し合うからいいんや」と言う。なかなか味のある喩え方だ。金本タイガースが売り出す1番・高山俊、2番・横田慎太郎をこう、なぞらえる。
高山は日大三で甲子園優勝し、明大で東京六大学通算安打記録を更新したドラフト1位ルーキーだ。横田は2013年の高卒ドラフトで選ばれてから今季まで、一軍の公式戦でプレーしたことがない20歳である。
ここで余談を挟む。2月の頃だった。沖縄・宜野座キャンプ中、他球団の担当記者から尋ねられた。「ヨコタってどんな選手?」。無理はない。鹿児島実では甲子園と無縁だった。高卒3年目の外野手は、関西以外のメディアで大きくクローズアップされたことはなく、ベールに包まれていた。一軍キャンプには参加していたが、当初は開幕一軍を競うかなというくらいの位置づけだった。
まさか「2番・中堅」で開幕戦からスタメンに抜てきされるとは、誰も予想していなかった。
キャンプ序盤の打撃は「上と下がバラバラ」。
迫り来る球に食らいついて、フィールドに転がすと俊足を飛ばして内野安打を稼ぐ。ひとたび塁上に立てば迷わず盗塁を試みる。その快足ぶりはいまや、敵の内野陣にとって脅威になっている。
片岡コーチは「アイツのいいところはボールを怖がらないことやな」と説明する。
不格好でもいい。泥臭くてもいい。全身からアドレナリンをプンプンと発散させ、ガツガツとプレーする。横田も「もう二軍に落ちたくないんです」と言う。失敗を恐れず、前へ、前へとグイグイ進む。
いったい「横田慎太郎」はどこから来たのか?
いまや、黄金ルーキーに負けない存在感を放つ薩摩隼人だが、実は、キャンプ序盤は悩んでいた。フリー打撃では時折、一軍主力も顔負けのパワーで遠くに飛ばし、潜在能力の高さに誰もがほれ込むが、視察する他球団スコアラーは「上と下がバラバラ。状態は良くない。このままじゃ二軍に落ちるんじゃないか」とも指摘していた。
キャンプの初日。グリップを顔に正対させて構え、そこからグッと後方に引き、テークバックを作って打っていた。確かに上半身と下半身が連動せず、間をとれずに、力を伝えきれていないように映った。