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ロシアでは常飲、米国では販売禁止。
シャラポワの薬「メルドニウム」って?
posted2016/03/11 10:40
text by
及川彩子Ayako Oikawa
photograph by
AFLO
テニス界で絶大な人気を誇るマリア・シャラポワ(ロシア)が1月の全豪オープンでのドーピング検査の検体から、禁止薬物『メルドニウム』の陽性反応が検出されたことを発表した。偶然にも同時期に、フィギュアスケートのアイスダンスのエカテリーナ・ボブロワ(ロシア)も同じ薬物での違反が発表されている。
陸上や自転車などと異なり、ドーピングとは比較的縁のない競技での相次ぐロシア人選手の違反、そしてテニスだけではなくスポーツ界全体でも人気のシャラポワの薬物使用とあり大激震が走った。
「今まで飲んできた常用薬がたまたま世界反ドーピング機関(以下WADA)の禁止薬物になったことに気づかなかっただけでは」
シャラポワの記者会見を見て、彼女の言葉を額面通りに受け取り、こう考えた人もいたかもしれない。しかし今回の件には、不可解、そして疑問符がつく部分がとても多い。
居住する米国では販売禁止の薬をなぜ10年も?
今回シャラポワが陽性反応を示したメルドニウムは、ラトビアの医師が開発した狭心症の薬で、ロシアを中心に東欧諸国で販売されている。昨年のロシア人の死因の第1位は心疾患という結果をみると、この薬がロシアで流布し、常用薬として摂取している人がいることは理解できる。
しかし20年以上も米国在住の彼女が、なぜ家族のかかりつけの医者に米国では販売が許可されていない薬を10年もの間、処方してもらっていたのだろう。糖尿病や不整脈の治療のためならば、米国にも認可されている薬はあるはずだ。
シャラポワやボブロワの違反を受けて、ロシア陸連で働いていた知人は「ロシアでは安価で簡単に手に入る薬。みんなビタミン剤のように飲んでいるものなのに、WADAが禁止リストに入れるなんて馬鹿げている」とツイッターで噛みついていたが、シャラポワも同じような認識だったのだろうか。
だが、特定の地域で飲まれている薬物やハーブなどで違反になった際に、「うちの庭で採れた薬草を飲んで何が悪いんですか。近所の人もみんな体調が良くなるって言ってます。自然の物で手作りですからドーピングじゃないです」と言ってももちろん通用しない。試合が国際基準のルールに則って行なわれるように、ドーピングにも明白なルールがある。今回の問題は、ロシア基準が世界のルールから大きくかけ離れていることを露呈してしまった。