錦織圭、頂への挑戦BACK NUMBER

錦織の強さを吸い取ったジョコビッチ。
無敵王者に勝つ方法を知る者は?

posted2016/01/29 18:15

 
錦織の強さを吸い取ったジョコビッチ。無敵王者に勝つ方法を知る者は?<Number Web> photograph by Hiromasa Mano

「(ジョコビッチは)一番強い選手だったとはいえ、もう少し何かできたはず……」と試合後にコメントした錦織。

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山口奈緒美

山口奈緒美Naomi Yamaguchi

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Hiromasa Mano

 シーズン最初のグランドスラム、全豪オープンでの錦織圭は昨年同様にベスト8に終わった。そして錦織にとって、王者ノバク・ジョコビッチに対する2016年最初の挑戦も失意の底に沈んだ。

 昨年4つのグランドスラムの全てで決勝に進出して3つで優勝し、マスターズシリーズ9大会のうち6大会を制して独走するジョコビッチを今年誰が止めるのか――。

 今の男子テニス最大の見どころであり、〈打倒ジョコビッチ〉はトッププレーヤーたちにとって最大のテーマだ。そして、今大会に限れば5人目の挑戦者が錦織だった。

 シーズンで見れば10人目。ここまでの9人の中には、現在錦織より上、世界5位のラファエル・ナダルも、6位のトマーシュ・ベルディヒもいた。しかし、最後にジョコビッチに勝った日は、この2人よりも錦織のほうが新しい。しかもそれは全米オープンの準決勝という大舞台であり、ジョコビッチにとってそれからの1年半のグランドスラムで味わった敗戦は、昨年の全仏オープンでスタン・ワウリンカに敗れた決勝戦しかない。

 あの全米オープン以来、錦織に対してはジョコビッチが4連勝しているが、うち2回は錦織がセットを奪っている。ジョコビッチが錦織のテニスの〈スピード〉を警戒していることは確かだ。動きの速さと、ボールを早くとらえる攻撃の速さというふたつの「速さ」。そして錦織には、「これをやりきれば勝てる」というセオリーと自信があった。

もう一度ジョコビッチに勝つ準備はできている。

 今大会中に、「全米でジョコビッチに勝ったときの試合の映像を見たりするのか」と外国の記者に聞かれた錦織は、「自信をつけるために、ときどき見ることもあります」と答えている。最後の対戦となるツアーファイナルで1-6、1-6と粉砕されているにもかかわらず、「もう一度勝つ準備はできている」と言いきる錦織を〈自信過剰〉と言う人もいるようだが、自身のベストテニスをすれば勝つチャンスがあるという確信は、あのときの映像が何度でも与えてくれるはずだ。

 それをやりきるために必要なものは……ベストのフィジカルコンディションと、そこから発揮される集中力。

 錦織はときどき、完全にペースをつかんでいる試合で、ふとしたミスから自分を苦境に陥れていまうことがある。

【次ページ】 小傷を受けても致命傷……それがジョコビッチ。

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