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マイラーは「短距離馬」でいいのか?
モーリスと外国人騎手で考えるJRA賞。
posted2016/01/09 10:30
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph by
Kyodo News
2015年度のJRA賞が発表され、年度代表馬には昨年6戦全勝、うちマイルGI3勝という成績をおさめたモーリス(牡5歳、父スクリーンヒーロー、美浦・堀宣行厩舎)が選出された。短距離部門から年度代表馬となったのは、1998年タイキシャトル、'13年ロードカナロアにつづく史上3頭目のことだ。
記者投票の結果は、モーリス215票、ラブリーデイ55票、ドゥラメンテ19票、キタサンブラック1票、該当馬なし1票。もう少し票が割れると思われたのだが、ふたをあけてみればモーリスの圧勝だった。
勝ったレースの格で言うと、ラブリーデイの宝塚記念と天皇賞・秋、ドゥラメンテの皐月賞とダービーのほうが、モーリスの安田記念とマイルチャンピオンシップより上なのだが、やはり世界の強豪相手に完勝したという点でも、昨年GIを3勝した唯一の馬となったという点でも、香港マイルが大きかった。
昨年の1月には1000万条件を走っていた馬が、'07年ダイワメジャー以来8年ぶり6頭目の春秋マイルGI制覇をやってのけ、さらに日本馬として'05年ハットトリック以来10年ぶり3頭目の香港マイル優勝と、名馬への階段を一気に駆け上った。
2000m、もしかすると2400mでも相当強いのでは?
JRAのホームページに掲載された堀調教師のコメントに、「今後もこの馬の可能性を追求して、持って生まれた能力を発揮させていく」とある。堀師が思う「この馬の可能性」と「持って生まれた能力」には、「マイルより長い距離での強さ」も含まれているのだろうか。
マイルチャンピオンシップのレビューでも述べたように、私は、モーリスにとってベストの距離はマイルではなく、2000m前後か、ひょっとしたら「チャンピオンディスタンス」と呼ばれている2400mでも相当強いのではないかと思っている。理由は、いつも綺麗に折り合い、エンジンのかかりが遅く、加速しながらゴールしているから、だ。父スクリーンヒーロー、母の父カーネギーという血統も、距離が延びてこそという感じがする。
3歳時に2200mの京都新聞杯で7着に敗れているが、距離適性のせいではない。その2走前のシンザン記念はマイルだが、勝ったミッキーアイルに1秒1も離された5着に沈んだように、まだ力を発揮できる状態ではなかったからだ。
今年は、もっと長い距離での走りをぜひ見せてもらいたい。