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5年ぶり100%の内山と、因縁の井岡。
大晦日の常連2人に望む完璧な勝利。
posted2015/12/31 10:30
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph by
Getty Images
大みそかに行われる世界タイトルマッチは東京、名古屋、大阪で計5試合。テレビ東京の顔と言えるWBA世界スーパーフェザー級スーパー王者の内山高志(ワタナベ)、TBSの井岡一翔(井岡)はそれぞれ5年連続の大みそか出場で、もはや年末の顔といえる存在になった。
内山と同じリングではWBA世界ライトフライ級王者の田口良一(ワタナベ)、名古屋では日本最速となるプロ5戦目でWBO世界ミニマム級王座を獲得した田中恒成(畑中)、そして大阪ではIBF世界ミニマム級王者の高山勝成(仲里)がそれぞれ防衛戦を行うが、やはり今年の大みそかも内山と井岡の2王者が主役と言えるだろう。
内山の強さをあらためて説明する必要はないかもしれないが、タイトルマッチに向けての公開練習で口にした言葉に、一瞬耳を疑いたくなった。
「万全で試合に臨めるのは久しぶりですね。どうでしょう、世界を獲って2度目の防衛戦までは万全だったので、だいたい5年ぶりくらいのことですね」
故障を抱えた状態でも圧勝してきた内山。
2010年1月に世界王者となった内山は、これまでに10度の防衛を成功させており、タイトルを獲得した試合を含めた世界タイトルマッチ11試合で、9つのKO勝ちをマークしている。つまり、ほとんどの試合が圧勝なのだ。
V3の三浦隆司(帝拳)戦、V8の金子大樹(横浜光)戦ではダウンを奪われたが、三浦戦では右拳を脱臼しながら左手一本でのちの世界王者をTKOに追い込み、金子戦は世界戦で唯一フルラウンド戦ったとはいえ、ダウン以外は完全にペースを掌握していた。つまりこの2試合も大勝に違いないのである。
ストレスを抱えたまま世界タイトルマッチの舞台に立っていた内山は、2014年に1年のブランクを作って右拳を治し、10度目の防衛戦後には左ヒジの遊離軟骨除去手術を受けてこれを克服した。つねに故障を抱えた状態であれだけのパフォーマンスを見せていた内山が、万全の体を手に入れて、はたしてどれだけ強いのか。そう考えると楽しみというより、恐ろしくすらなってくる。