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史上初の昇格3クラブ同時残留か!?
大宮、磐田、福岡のJ1参戦を占う。 

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戸塚啓

戸塚啓Kei Totsuka

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posted2016/01/02 10:30

史上初の昇格3クラブ同時残留か!?大宮、磐田、福岡のJ1参戦を占う。<Number Web> photograph by J.LEAGUE PHOTOS

昇格プレーオフ史上、3位のクラブがJ1に昇格したのは福岡が初めて。J2で3番目に強いクラブ、の位置を正しく測る年になる。

失点が多いジュビロは守備の整備が急務。

 他チームからの補強に頼ると、パッチワークのようなチームになりかねない。移籍マーケットを活用するとしても、クラブへのロイヤリティを持った選手を集めるべきだ。自らのキャリアアップだけでなく、「クラブのため、チームのために戦う」というメンタルの広がりは、苦しい局面を切り抜ける地力につながっていく。アルビレックス新潟から大井健太郎と山本康裕を呼び戻したのは、その意味で理にかなっている。

 J1定着への第一歩は、ディフェンスの整備だろう。'14年のJ2をリーグ最少25失点で乗り切った湘南ベルマーレは、'15年のJ1で44失点を喫した。同じく'14年のJ2で35失点だった松本山雅は、'15年のJ1で54失点を許した。6位で昇格したモンテディオ山形も、44から53まで失点が増えている。そして、松本と山形はJ2へ降格することとなった。

 '15年のJ2におけるジュビロの失点は、J2で9位タイの「43」である。少なくとも同水準を維持しなければ、J2降格をめぐる争いに巻き込まれてしまう。ディフェンス力の向上が不可欠だ。

福岡はレンタルの選手を慰留できるかが勝負。

 J1昇格プレーオフを制したアビスパ福岡は、過去3シーズン連続でJ2の二桁順位をさまよっていた。上位どころか中位にも食い込めない元凶が、不安定なディフェンスだった。試合数を大きく上回る失点を記録しているようでは、J1昇格へ手が届くはずもない。

 しかし'15年に就任した井原正巳監督のもとで、アビスパは変貌を遂げた。'14年の60失点からリーグ4位タイの37まで失点を減らし、アルディージャ、ジュビロに次ぐ63得点を記録した。J1昇格プレーオフ決勝は1-1のドローで勝ち抜いたが、対戦相手のセレッソ大阪にはリーグ戦で連勝していた。2011年以来のJ1復帰は、幸運やツキに恵まれたものではない。実力の表われである。

 守備の再構築を進めていく過程で、井原監督は3バックと4バックを使い分けした。戦術的柔軟性を高めたのは、'16年に向けた好材料にあげられる。同時に、7月に加入したFWウェリントンと契約を更新したことで、攻撃も'15年を土台としてJ1へ挑める。高さと強さを兼備したポストワーカーにして、決定力も見込めるこのブラジル人FWは、J1のどのクラブでもプレーできる力を持つ。

 気になるのは期限付き移籍でプレーした選手の動向だ。シーズン途中から定位置をつかんだGK中村航輔、左右両サイドでプレーできるDF亀川諒史を引き留められるかどうかで、井原監督の構想も変わってくるだろう。もっとも、U-22日本代表候補の彼らは、リオ五輪出場となればリーグ戦を欠場することになるかもしれない。そのあたりも想定したうえで、新シーズンへの編成を進めていくはずだ。筆頭株主の代わった'15年から人件費を増やしているだけに、予算がチーム作りの障害になることはないだろう。

 いずれにせよ、シーズン終盤を12試合負けなしのハイペースで駆け抜け、J1昇格プレーオフを1勝1分けでくぐり抜けた事実は、アビスパがなお成長過程にあることを示している。井原監督のチームには、J2の3位がどこまでJ1で通用するのかを見せてもらいたい。

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