フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
中国杯で天才ボーヤン・ジンが世界初!
4回転ルッツ+3回転トウループの衝撃。
posted2015/11/10 11:00
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph by
Shingo Ito/AFLO SPORT
ついに来たか――。
中国杯のボーヤン・ジン(中国)のSPを見たとき、思わず歓声をあげたくなった。
まるで3回転だったかと思わせるほど簡単にきめた、4回転ルッツ+3回転トウループコンビネーション。
4回転ルッツはこれまで単独で成功させた選手が過去に1人いたのみで、国際大会でコンビネーションで成功させたのは世界初の快挙である。
フィギュアスケートに、また新たな歴史が刻まれた。
世界初の4回転ジャンプはどのように生まれた?
4回転ジャンプというものがフィギュアスケートに登場したのは、1980年代のことだった。
記録に残っている競技で行われた最初の4回転ジャンプは、1983年にヘルシンキで開催された世界選手権でソ連のアレクサンドル・ファデーエフが挑んだトウループだった。だがこのときは手をついて承認されず、ファデーエフは総合4位に終わっている。
競技でISU(国際スケート連盟)が正式に4回転トウループを承認したのは、1988年のブダペスト世界選手権でのこと。成功させたのは、カナダのカート・ブラウニングだった。その2年前の欧州選手権で、チェコスロバキアのジョセフ・セボブチックがやはり4回転トウループを降り、いったんは承認されたものの3週間後に「フリーレッグ(着氷していない方の足)をついていた」という理由で取り消されていた。
だから1988年のブラウニングのものが、公式の記録に残る最初に競技で成功した4回転ジャンプである。だがこの大会で規定で12位、ショートプログラム(当時はオリジナルプログラムと呼ばれた)で7位だったブラウニングは、フリーで3位になるも総合6位にとどまった(余談だが、この大会で2位だったのが、現在羽生結弦らを指導するブライアン・オーサーだった)。