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レッドブルがまさかのF1撤退危機。
エンジンメーカーを怒らせた“驕り”。
posted2015/10/18 10:30
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph by
Getty Images
レッドブルがF1から撤退するかもしれない。理由はパワーユニットの供給をいずれのメーカーからも拒絶されているからだ。
現在レッドブルが使用しているパワーユニットは、ルノーである。
しかし、エンジンがパワーユニットと呼ばれるようになった2014年から、戦闘力が乏しくなったルノーに対して、レッドブルは再三批判を繰り返してきた。その結果、両者の関係は次第に悪化。
地元レッドブルリンクで行われたオーストリアGPで、レッドブルは1点しか獲得できず一敗地に塗れた。レース後に視察に訪れていたオーナーのディートリッヒ・マテシッツが、ルノーのパワーユニットを「最低の性能」と痛烈に批判した。
この突然のレッドブルとルノーの関係悪化に驚く者は少なくない。なぜなら彼らは、つい2年前まではドライバーズ選手権とコンストラクターズ選手権を4連覇し、良好な関係を築いているように見えていたからだ。
堪忍袋の緒が切れたルノー。
しかし、ルノーに近い関係者によれば「すでにそのときから、両社に隙間風は吹いていた」という。というのも「数々の栄光を収めてきたときでさえ、レッドブルはその要因を車体性能の高さだと自慢し、レースに負けるとルノー・エンジンのパワー不足を理由に挙げていた」からだ。
屈辱的な批判を受け続けてきたルノー側は、ついに堪忍袋の緒が切れた。
CEOのカルロス・ゴーンが「エンジン供給者としてF1に関わる時代は終わった」と、2016年まで契約が残っているレッドブルに対して決別宣言ともとれるコメントを発し、ロータスを買収してチームとして参戦していく決意を示した。
この時点でレッドブルには、まだ余裕があった。なぜなら彼らは自らの車体性能に自信があり、自分たちとパートナーを組むメーカーがあると信じて疑わなかったからだ。ところが事態は、レッドブルが思い描いたとおりには進まなかった。