ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
丸山茂樹が引き受けた五輪のコーチ。
「引率役」の葛藤と重みを感じて。
posted2015/09/28 10:30
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph by
Kyodo News
トレードマークの笑顔とは違った。
開幕まで1年を切ったオリンピック。ゴルフが112年ぶりに正式種目に復帰するリオデジャネイロ大会で、丸山茂樹が日本代表チームのヘッドコーチに就任することが決まった。
日本ゴルフ協会のオリンピック競技対策本部は、男女の代表選手を率いる“総監督”といえるポストに丸山を指名。それを快諾したあと、メディアの前に最初に出てきた丸山の表情が印象的だった。
米国でSmiling Assassin(笑顔の刺客)と呼ばれた“マルちゃん”らしさはそこにない。開口一番「すごく責任を感じます」と、周囲の予想よりもはるかに神妙な面持ちで言った。
サッカーや野球、ラグビーの代表監督とは違い、今回の丸山が就任したヘッドコーチという立場の仕事には、いささか不透明な部分がある。
リオデジャネイロ大会は世界から男女各60人が出場し、一般的なトーナメントと同じように、個人戦の4日間72ホールのストロークプレーで争われる。代表選手は来年7月11日、世界ランクをもとにしたオリンピック・ランキングで決定。各国最大4人までに出場権が付与される。
9月22日時点での日本の出場枠は男女2人ずつ。男子は松山英樹が決定的と見られ、後続は岩田寛、小田孔明に次ぎ、ANAオープンで優勝した石川遼が4番目に割り込んできた。女子は上田桃子、宮里美香、大山志保、成田美寿々が上位につけているが、順位が拮抗しており、争いはより熾烈である。
選考も、コーチングも役目ではない。
要するに、リオ大会においてゴルフのヘッドコーチは、代表選手を選考する役目がない。また、2年前に丸山がアジア出身選手として初めて世界選抜の副キャプテンを務めたプレジデンツカップのように、団体戦の作戦を練るわけでもない。
それを誰よりも理解しているのが丸山自身である。
「ゴルフは個人のスポーツ。コーチングに関しては個々が師と仰ぐ人がいる。芝への対応や、コースマネジメントといったことで、聞かれたことに明確に答えることが僕の役目」
南米での戦いは、田中秀道と出場した2000年のワールドカップ・アルゼンチン大会での経験がある。気候や芝質について予見があるが「あとは選手をなるべく盛り上げることに徹したい。余計なことを言うつもりはない」と、あくまで黒子役に徹する心づもりである。