プロ野球亭日乗BACK NUMBER
東北楽天で打撃コーチが辞任。
球団オーナーが現場介入したら……。
posted2015/08/07 11:50
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
Hideki Sugiyama
映画『マネーボール』でブラッド・ピットが演じたオークランド・アスレチックスのGM、ビリー・ビーンは本当に嫌な奴だった。
高慢で自信過剰で自己中心の癇癪持ち。自分の思い通りにいかないと、策略を巡らせて相手を陥れることばかりを考えている。名優フィリップ・シーモア・ホフマンの演技のうまさもあって、いかにも頼りない頭の悪そうな監督に仕立てあげられていたアート・ハウを、これでもかとバカにして最後はニューヨーク・メッツに売り飛ばすのだが、ブラピのいかにもしてやったりの風情がムカついたものである。
おそらく映画ではあまりにいけすかないビーン像を中和するために、原作にはない家族との物語を挿入したのだろう。そんなビーンの人間的苦悩を描くことを緩衝材として、最後もチームのためにボストン・レッドソックスからの巨額オファーを断ってチーム愛に生きているという人情ものに仕立て上げられていた。でも、あんな人を人とも思わない上司を持ったら、一部の絶対服従を貫くことで寵愛を受ける部下以外は、まったくたまったものではないと思ってしまうのである。
まあ、映画そのものが原作には遠く及ばない薄っぺらな内容だったのは間違いない。ブラピを観るための映画という陰口も言われていたし、映画館には野球のことはまったく分からなそうな女性ファンが多かったように思えた――のは、きっと筆者の偏見だったのだろうが。
オーナーが現場介入している、というのは本当!?
ところがそんなブラッド・ピットを、「かっこいい!」と思う人がいたのかもしれない、と思ったのは、ある球界の騒動を耳にしたときだった。
「楽天がとんでもないことになっているんですよ」
春先にある関係者からこんな話を聞いた。
今季から大久保博元監督が就任して新体制でスタートしたが、三木谷浩史オーナーが毎試合現場に介入してきて、大混乱を巻き起こしているという話だった。