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バルサとレアルの下部組織が危機に!
期待の若手を次々と放出する理由は? 

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工藤拓

工藤拓Taku Kudo

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posted2015/08/05 10:40

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カタルーニャ人であり、他クラブのユニフォームでプレーしたことがないサンペールは、カンテラにとっても貴重な存在。しかし、トップチームに彼の席が空くのはいつになるか……。

スペインの2強が多国籍軍になるのも味気ない。

 その一方で、無類の買い物好きであるフロレンティーノ・ペレス会長は年末年始に獲得したマルティン・ウーデゴール(16)、マルコ・アセンシオ(19)、ミンク・ピータース(17)らに続き、今夏もサラゴサのヘスス・バジェホ(18)、テネリフェのカルロス・アバド(19)を獲得。ベティスのダニ・セバージョス(18)にも目をつけるなど、「とりあえず買っておけ」と言わんばかりに他クラブの若いタレントを漁っている。

 中でもウーデゴールは、トップチームで練習しながら試合だけカスティージャで出場するという特別待遇を受けたことでカスティージャの中で完全に浮いてしまい、彼が加入したとたんにチームが勝てなくなるという惨状。シーズン半ばに加入し、一緒に練習もしない選手が試合にだけ起用されるなんて、他の選手たちからすれば迷惑だと感じてしまうのもやむをえないことだろう。

 こうした状況が続けば、そのうち良識ある若い選手たちはバルセロナやレアル・マドリーに背を向け、トップチームまでの道のりが整備されているクラブを選ぶようになっていくだろう。才能ある選手が多くのクラブに散らばるのはスペインサッカー界にとって良いことだろうが、同国を代表する2強の育成組織が衰退し、プレミア勢のように多国籍軍となってしまうのも味気ない。

 2強からはそれぞれクラブの象徴的存在として活躍してきたシャビ・エルナンデスとイケル・カシージャスが退団した。現在のカンテラを取り巻く状況を見る限り、はたして次に彼らのような選手が出てくるのはいつのことになるだろうかと考えずにはいられない。

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