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日本ハム・中島卓也の「6、7年計画」。
“非力”な高校時代のスカウト秘話。
posted2015/06/09 10:50
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
NIKKAN SPORTS
こんな記録がある。
すべて今シーズン、すべて同じ選手によってマークされた記録である。
5月13日 1打数1安打2打点4四球
対西武8-7 試合時間 4時間31分
5月21日 6打数5安打3打点1犠打
対楽天5-9 試合時間 5時間37分
5月26日 4打数3安打0打点1四球1犠打
対ヤクルト5-12 試合時間 4時間
5月27日 7打数4安打1打点
対ヤクルト5-5 試合時間 4時間54分
5月中のある4試合での打撃成績だが、共通項がある。
いずれも、4時間以上の長い試合。
その中で、4回以上出塁し、その内容は4安打、5安打もあれば1試合4四球もあるというバリエーションに富んだもの。その間には送りバントも確実に決めているし、言い添えればこの選手、4試合トータル19時間2分の中で1つの失策も犯していない。
あるプロ野球チームの遊撃手の“断片”を集めたものである。
長い試合を乗り切る屈強な大型遊撃手、ではない。
この選手、いったい誰でしょう? もしそう問われても、私にはわからなかっただろう。
4時間あれば、東京を出た新幹線は広島に達する。5時間かければ、終点・博多に達するほどの長い長い時間を、遊撃手という負荷の大きなポジションを破綻なく守りながら、しかも打者としてもその役割を全うできる選手。
屈強な大型遊撃手、たとえば巨人・坂本勇人あたりを想像するだろう。
まさか、あのきゃしゃなユニフォーム姿の、非力といわれて二塁打もなかなか出ない、あの遊撃手のこととは夢にも思うまい。