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新ヘッドコーチの人選に、サンダーの大胆さを見る。
~NBA未経験の男を選択した理由~ 

text by

宮地陽子

宮地陽子Yoko Miyaji

PROFILE

photograph byGetty Images

posted2015/06/02 10:00

NBAの選手としては1季のみの経験ながら、フロリダ大で指揮官として開花したドノバン。

NBAの選手としては1季のみの経験ながら、フロリダ大で指揮官として開花したドノバン。

 オクラホマシティ・サンダーが、またしても、サンダーらしい決断を下した。ふだんはじっくりチームを育てる熟成型の組織なのだが、節目節目で、周囲を驚かせる大胆な選択をする。2年半前はジェイムズ・ハーデンのトレードだった。今回はコーチ交代だ。

 まず、若いチームを7シーズンに渡って率いて、共に成長してきたスコット・ブルックスを解雇。ケビン・デュラントら主力を故障で欠きながらも45勝37敗の好成績を残し、あと一歩でプレイオフ出場という結果を出した直後のことだ。

 しかも、代わりに選んだのは大学界では名将ながら、NBAでのコーチ経験がない元フロリダ大ヘッドコーチのビリー・ドノバン。以前からNBAでは大学コーチはNBAでは成功しないという通説があるのだが、それを無視し、自分たちの価値観を優先しての選択だった。

 多くの候補の中からドノバンを選んだ理由として、サム・プレスティGMは、リーダーとして成功してきた実績に加え、新しいことを取り入れ、時代とともに変革を遂げる好奇心の強さをあげた。NBA界も近年はスタッツ分析を取り入れ、新しいテクノロジーを活用する傾向にある。そういった新しい流れを受け入れ、将来に向けてチームと共に歩めるコーチだと判断したわけだ。

バスケだけでなく、オクラホマシティの一員として。

 加えて、コート外では、オクラホマシティのコミュニティの一員として、地元ファンとチームとの結びつきを心から理解できることも大事だった。

 その点では、ドノバンは20年前に運命的な経験をしていた。'95年4月、高校生以下のクラブチーム大会を見るために初めて街を訪れたのが、連邦政府ビル爆破事件の約1週間後だったのだ。今回、プレスティGMが、地元コミュニティと共鳴することが大切だと語るのを聞き、当時、街中を運転し、人に案内されて事件現場を訪れた記憶が鮮やかに蘇った。

「このチームが、バスケットボールをするだけの組織でないことは明らかだ」とドノバンは言う。

 その価値観を理解したドノバンだからこそ、プレスティは彼を選んだ。その価値観に共鳴したからこそ、ドノバンも古巣のフロリダを離れる決意をした。

 サンダーにとっても、ドノバンにとっても、新たな挑戦が始まった。

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