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障害界の新星誕生をめぐる様々なドラマ。
~騎手、調教師、そして素直な馬の絆~ 

text by

片山良三

片山良三Ryozo Katayama

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photograph byNIKKAN SPORTS

posted2015/05/17 10:30

障害界の新星誕生をめぐる様々なドラマ。~騎手、調教師、そして素直な馬の絆~<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

中山GJで大竹柵を飛越するアップトゥデイト。障害転向6戦目にしてGI勝利を飾った。

 日本の障害レースでGIに格付けされているのは、春の「中山グランドジャンプ」と年末の「中山大障害」の2つだけ。その2回のためだけに出番を待つ「大竹柵(だいちくさく)」と名付けられた格別に難易度が高いハードルをはじめ、7つの障害を11回飛越し、バンケット(谷)を6回昇降する難コースで争われる、名実ともに障害界の頂点を決めるビッグレースだ。1着賞金は6500万円。英国が誇る名物レース「グランドナショナル」(約7242m、障害飛越30回)の1着賞金90万ポンド(約1億6200万円)には及ばないものの、きちんとした形で頂点が用意されているからこそ、障害界のレベルが保たれていると言える。

 今年も皐月賞の前日に開催された中山グランドジャンプ(芝4250m)は、昨年の覇者アポロマーベリックが逃げの手に出て、それを序盤からつけ回す積極策で挑んだアップトゥデイト(牡5歳、父クロフネ、栗東・佐々木晶三厩舎)が、3コーナーで堂々と先頭に立ってそのまま後続を完封してしまった。4分46秒6はレコードタイムで、2着ソンブレロ以下を1秒7もちぎり捨てる快勝劇。断然人気のレッドキングダムが故障に泣くアクシデントはあったものの、この内容なら誰にも文句は言わせない。若く強いハードルスターが誕生した。

48歳・林満明のGI初勝利と、佐々木調教師の涙。

 その鞍上にいたのは、現役では木幡初広、柴田善臣に次ぐ3番目の年長となった、48歳の林満明騎手。'97年に18勝をあげて、今も破られていない年間最多障害勝利記録をマークし、優秀障害騎手賞を5回も獲得している実績十分の人だが、GIはなんと初勝利だった。

「30年かかりました」と、感極まった表情から、「こんな遅咲きは他にいないし、その分これからもやれると思っています」と、欲張りなコメント。最近の48歳は、キング・カズに引っ張られて元気なのだ。

 佐々木調教師も感激の面持ち。'98年に管理馬の落馬事故で親友でもあった北村卓士騎手に大ケガを負わせ、それ以来障害馬の管理を断り続けていたからだ。「二度とやらないつもりでしたが、この馬の真っ直ぐな気性に触れて考えが変わったんです。でも、16年ぶりに手掛けた馬がGIを勝ってくれるなんて」と目がウルウル。地味なイメージの障害戦だが、ドラマはそこここに存在していた。

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