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テクニシャンか「少し汚く」か――。
村田諒太、方向性を決める7戦目へ。
posted2015/05/01 10:40
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph by
AFLO
もう、ロンドン・オリンピックから3年が経つのか……。
ロンドンの現場で見た村田諒太はクレバーで、イギリスBBCのアナウンサーが「カムバック・キッド」と呼ぶほどタフだった。
そしてオリンピックの翌年、2013年にプロへ転向。
2013年8月のプロデビュー以来、ここまで6戦6勝ではあるが、5戦目、6戦目は判定勝ちという結果で、スカッとした内容とは言い難かった。特に12月30日に行われたニックロウ(アメリカ)との一戦ではガードの固い相手を攻略しきれず、今後の展開に不安を残した。
そして5月1日、WBC世界ミドル級7位までランクを上げてきた村田が、WBO同級14位のダグラス・ダミアオ・アタイジ(ブラジル)と対戦する。
プロに転向してから、村田にはどんな変化が起きただろうか。
アマチュア・ボクシング界で、村田のことを高く評価していた関係者が「アマとプロのテクニックはもちろん違いますが――」という前提で語る。
「プロに入ってから、村田の良さが失われてしまった面がある。アマ時代は、ワンツーのコンビネーションのテンポ、上下の組み合わせが本当に素晴らしかった。世界を見渡してもアマのミドル級の選手で彼ほど高等なテクニックを持っているミドル級のボクサーは誰もいませんでしたよ。いつからか、その巧者ぶりが見えなくなってしまった」
「もともと自分はおとなしいタイプではない」
その見立てに呼応するかのように、村田は今回の試合を前にした会見で、自分のスタイルの変化を次のように語っている。
「プロに来て、テクニックを覚えなくてはいけないと思って、そっちばかりに走りすぎていた気がします。もともと自分はおとなしいタイプではない。少し汚いことをやってでも勝ってやろうという性格。ボクシングは殴り合い。何としても勝つという気持ちで戦う」
そうアマチュア時代の原点へ帰ろうという意思をハッキリと語っていたのだが、これまではプロのテクニックの習得を意識するあまり、かえって自分の持っていたテクニシャンの部分を失ってしまったかに思える。