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米国ヘビー級希望の星、ワイルダーが秘める力。
~クリチコの牙城を崩せるのか?~ 

text by

前田衷

前田衷Makoto Maeda

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photograph byGetty Images

posted2015/04/29 10:30

米国ヘビー級希望の星、ワイルダーが秘める力。~クリチコの牙城を崩せるのか?~<Number Web> photograph by Getty Images

 メイウェザー対パッキャオ戦の前景気が盛り上がっているが、実は米国でのボクシング人気はそれほど高くない。よく言われるように、ヘビー級の不振が大きいのは確かだろう。昔から体重無制限のこの階級の王者はアメリカのボクサーであることが当たり前だったのに、近年は傑出した選手が出てこない。主要4団体の世界王座からも長く遠ざかり、ウクライナの巨人ウラジミール・クリチコの長期安定王朝を許してきた。

 そんな中で久々にアメリカらしいヘビー級の世界王者が誕生した。去る1月、ハイチ出身の王者バーメイン・スティバーンに12回判定勝ちし、WBCタイトルを獲得したデオンテイ・ワイルダーである。アラバマ生まれの29歳。2mを超す巨漢で、「ブロンズ・ボマー」の異称は'08年の北京五輪ヘビー級で銅メダルを獲得したことに由来する。米国の男子ボクシングでは直近の2大会で唯一の五輪メダリストである。この直後、トラック運転手だったワイルダーがプロ転向したのは、難病と戦う娘のためにも稼ぐ必要があったからという。

33戦全勝32KO勝ちのパワーは、まるで劇画。

 驚くべきはその戦績で、33戦全勝32KO勝ち。世界挑戦で初めて判定まで戦ったのである。だが専門家らを驚かせたのは連続KOだけではない。パワー依存の一打必倒型とみられていたワイルダーが、世界戦の大舞台でアウトボクシングもできることを証明したのが意外だったのだ。これでワイルダー株は急上昇した。

 ボクサーとしてのスタートは21歳と遅いが、20戦超の僅かなアマ歴で五輪のメダルを手にしたのは、当て勘のよさなど天性のものがあったからだろう。これはメキシコ五輪で金、プロでも世界王者になったジョージ・フォアマンと同タイプ。無名の格下を何人も倒しまくり、自信をつけた上で世界を獲った経歴も似ている。ただしボクシングの質は若い頃のフォアマンやマイク・タイソンに比べるとまだまだ粗い。ユーチューブではワイルダーのKO集が見られるが、次々と巨木をなぎ倒すようなシーンの連続は劇画的で可笑しくもある。

 早くもクリチコとの統一戦が期待され、クリチコもメガファイトを歓迎している。ただ筆者は、米国の希望を潰さないためにも、39歳のウクライナ人との対戦はもう少し先でも良いと思うのだが……。

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