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<日本人ランナーに合う一足とは?> ニッポンのシューズ作り最前線を訪ねる。 

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近藤篤

近藤篤Atsushi Kondo

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photograph byAtsushi Kondo

posted2015/04/21 10:00

<日本人ランナーに合う一足とは?> ニッポンのシューズ作り最前線を訪ねる。<Number Web> photograph by Atsushi Kondo
春、新機能、新素材を搭載したシューズが続々と発売され、
ショップの店頭は華やかだ。だが、自分にあった1足を選ぶのは難しい。
そもそも日本人ランナーに適した1足とはどんなものなのか。
シューズ作りの現場を訪ね、日本人の足に精通する3人の匠に話をきいた。

好評発売中のNumber Do『RUNの百貨店』より、
シューズの達人たちからのアドバイスを一部公開します!

 いつも自分の足を眺めてはため息をついて生きてきた。なんでこうなんだ? 幅広、甲高、扁平で、おまけに右と左でサイズも違う。

 ずっと昔、アルゼンチンで生活していたときのことだ。ある日、友人とプールに出かけた。友人は僕の足をちらっと見て、エンパナーダ! と笑った。エンパナーダというのはラプラタ地方で作られるミートパイの一種で、色はきつね色、形はやたらと幅の広い餃子、を想像してもらえばいい。

 自分はこれまでの人生で、いったい何足の靴を新品同様のまま人に譲り、あるいはゴミ箱に捨ててきただろうか(プラダのブーツだって捨てたことがある)。合わない靴を無理矢理履いて、どれだけのマメやタコの痛みをこらえてきただろうか。鈍足だったのも、インフロントキックがうまく蹴れなかったのも、女の子にもてなかったのも、きっとすべてこの足のせいに違いない。

 そんな僕に編集部から電話がかかる。日本人の足にあったシューズ作りを取材しませんか? しないわけがないじゃないか。

瀬古、高橋、有森、野口らの足下を支えた伝説の職人。

 のぞみは10時55分に姫路駅に着いた。駅前でレンタカーを借り、国道2号線を南東に向けて走る。およそ45分、国道250号線が加古川にさしかかる手前を左斜めに進むと、左手にM.Labと書かれたビルが見えてくる。

 M.Labと書いて、ミムラボと読む。ここで話を聞くのは、伝説のシューズ職人、三村仁司氏(写真中央)である。'67年にオニツカに入社、'74年からはトップアスリートに向けた別注シューズ製作を1人で担当。その後35年の長きにわたり、君原健二、瀬古利彦、谷口浩美、高橋尚子、有森裕子、野口みずきといった陸上選手をその足下から支えてきた。縁の下の力持ち、と言うには、あまりにも有名すぎる人である。

 '09年にはアシックスを定年退職。自らの工房M.Labを設立すると、翌'10年にはアディダスと専属アドバイザー契約を締結した。

「うちでやっとるのは、選手に喜んでもらえるものづくりです。弱いところを見つけて強くしていく。悪いところを見つけて、直していく。要は疲れにくい、故障しにくい、走りやすい、記録が出る、そんな靴を作るんです」

 日本人の足にあった靴ってなんですか? 三村さんの答えはこうだった。

【次ページ】 欧米人に近付いたが、骨格はしっかりしていない。

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