SCORE CARDBACK NUMBER

辣腕監督・シメオネの秘密は町の本屋にあり?
~戦術本は「机上の空論」ではない~ 

text by

豊福晋

豊福晋Shin Toyofuku

PROFILE

photograph byAFLO

posted2015/03/13 10:00

辣腕監督・シメオネの秘密は町の本屋にあり?~戦術本は「机上の空論」ではない~<Number Web> photograph by AFLO

昨季リーガを制したシメオネは今季も優勝争い。既に2022年までの契約延長の話も出ている。

 近年リーガの統計を見ていて目立つのが、アトレティコ・マドリーのセットプレーにおける驚異的な強さだ。

 今季も24節終了時点で50得点の内21点をセットプレーから決めており、10点で続くレアル・マドリーやアスレティック・ビルバオを倍以上引き離している。セットプレーから派生した得点まで含めると数字はさらに伸び、その差は際立つ。

 グリエスマンやアルダら小柄な選手もおり、平均身長では他チームと大差はない。では、なぜアトレティコはこれほどセットプレーに強いのか――。

 その答えのひとつが、指揮官シメオネが愛する小さな書店に隠されている。

 マドリードの中心ソル広場の近くに、1969年創業の書店『エステバン・サンス』はある。あらゆるスポーツ本を揃える国内初のスポーツ専門書店だ。この店でシメオネは戦術本やセットプレー専門書を購入し、地道な研究を行なっているのである。'06年に母国ラシンの監督に就任した際は、監督本、メソッド本、技術本などを70冊購入。スーツケースに入りきらない量だったという。アシスタントのブルゴスを送り、偵察させることもある。店主のサンス氏は言う。

「シメオネは研究熱心で、どんなものからも何かを吸収しようとしている。セットプレーもそうで、うちの本からも積極的に学ぼうとしているんだ」

著者に関係なく目を通し、何かを盗み、練習に落とし込む。

 彼が購入したのは『フットボールのシステム』(アルフォンソ・サンチェス著)、『フットボールにおけるセットプレー』(マリオ・ボンファンティ著)など、いずれも有名監督やコーチのものではないが、彼は役立つと思えば手にとり、研究に活用するそうだ。

 一般的にプロの監督やコーチは、書店に出回るサッカー戦術本の類には目を向けない。それらはジャーナリストが書いた一般ファン向けのものが多く、「机上の空論」と軽視されるからだ。しかしシメオネは著者に関係なくすべての本に目を通し、何かを盗み、練習に落とし込んでいる。シメオネがセットプレー練習をするのは試合前日のわずか1日だけだが、濃密な練習の裏には、指揮官が書店で過ごす時間も隠されているのである。

 ちなみに同書店にはマラドーナも訪れたが「すべてこの中に入ってる」と頭を指差し、一冊も手に取らなかったそうだ。

関連コラム

関連キーワード
ディエゴ・シメオネ
アトレティコ・マドリー

ページトップ