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大器スタントンとイチローの技。
~マーリンズを待つ奇跡の化学反応~

posted2015/03/07 10:35

 
大器スタントンとイチローの技。~マーリンズを待つ奇跡の化学反応~<Number Web> photograph by AFLO

同じ外野手のイチローと談笑をするジャンカルロ・スタントン(中央)とマルセル・オズナ。マイク・レドモンド監督も「イチローのような選手と一緒にプレーすることで学ぶことが多い」と、若手への好影響を期待している。

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芝山幹郎

芝山幹郎Mikio Shibayama

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 イチローの加入で、マイアミ・マーリンズがぐっと身近になった。ジャンカルロ・スタントン、マルセル・オズナ、クリスチャン・イエリッチといった若手外野手の存在も、にわかに話題を呼ぶのではないか。

 とくに、チームの顔といわれるジャンカルロ・スタントンには注目が集まるはずだ。アメリカのファンも、彼は別格と見ている。2014年11月に結ばれた「13年総額3億2500万ドル」という大型契約(単独の契約総額としては史上最高)に度胆を抜かれた人が多かったのだ。たしかに、この若さでこれほど高い評価を受け、一生裕福な暮らしを保証された選手はめったにいない。

 スタントンに注目が集まるのは金額だけが理由ではない。25歳以前に通算154本の本塁打を放った選手もそうそういない。ジミー・フォックス、ミッキー・マントル、フランク・ロビンソンといった伝説的選手は別として、最近の例でいうと、25歳未満(開幕時)で彼よりも多く本塁打を打った選手は3人だけだ。アレックス・ロドリゲス(189本)、ケン・グリフィー・ジュニア(172本)、アルバート・プーホルス(160本)。いずれも超大物で、薬物禍を疑われるAロッド以外は、殿堂入りが確実視されている。2012年に三冠王を獲得したあのミゲル・カブレラ('83年4月18日生まれ)でさえ、'03~'07年の5年間で放った通算本塁打数は138本だった。

高校時代はさほど目立たず、ドラフトでは全体76位。

 スタントンのフルネームは、ジャンカルロ・クルーズ・マイケル・スタントンという。父親がアイルランド系で、母親がアフリカ系アメリカ人とプエルトリコ系の混血だ。ファーストネームから想像されるイタリア系の血は入っていない。1989年11月にロサンジェルス郊外で生まれ、サンフェルナンド・ヴァレーのノートルダム・ハイスクールを卒業している。

 高校時代のスタントンはそれほど熱い視線を浴びていない。同世代では、近くにあるチャツワース・ハイのマイク・ムスタカス(現ロイヤルズ)や同じくチャツワース・ハイのマット・ドミンゲス(現アストロズ)のほうが目立つ存在だった。

 実際、'07年のアマチュア・ドラフトでは、ムスタカスやドミンゲスが1巡指名を受けたのに対し(前者は全体2位、後者は全体12位)、スタントンは2巡指名(全体76位)という評価しか得ていない。ついでにいっておくと、この年の全体1位はデヴィッド・プライス(現タイガース)で、あのマディソン・バムガーナー(現ジャイアンツ)が全体10位の指名を受けている。

【次ページ】 18歳の時にシングルAで39本塁打を放ち、メジャーへ。

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