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王者の戦いに際立つコミュニケーション力。
~ラグビーの状況判断を磨くもの~ 

text by

大友信彦

大友信彦Nobuhiko Otomo

PROFILE

photograph byTamon Matsuzono

posted2015/02/21 10:00

帝京大をまとめ上げた流主将。昨年は日本代表候補合宿にも招集されたスクラムハーフだ。

帝京大をまとめ上げた流主将。昨年は日本代表候補合宿にも招集されたスクラムハーフだ。

 ラグビーってどんなスポーツ?

「もちろんボールゲームだよ」と即答する人もいるだろうし、「断然、格闘技です」と言い切る人もいるだろう。手も足も使えて、体当たりもできて、ボールを蹴ってもよければ、持って何歩走ってもいい。「一番自由なスポーツだよ」という答えもある。そんな無数の解がある中で「ラグビーはシンキング(考える)ゲームであり、コミュニケーションスポーツ」と言うのはロビー・ディーンズだ。スーパーラグビーのクルセーダーズを常勝軍団に育て、日本では今季、パナソニックを連覇に導いた名将である。

 極意は「最も効果的なアタックは、相手が教えてくれる」というもの。相手がどこかのディフェンスを厚くすれば、どこかは薄くなる。それを観察し、判断を共有し、実行するために「考える力とコミュニケーション力」を駆使するのだ。

パナソニック、帝京大ともに言葉で戦況を把握した。

 佳境を迎えた国内シーズン。その言葉が何度も頭をかすめた。トップリーグのプレーオフでは、ロビー率いるパナソニックが東芝、ヤマハ発動機を連破して2連覇を飾った。大学選手権で6連覇を飾った帝京大は、日本選手権1回戦でトップリーグのNECを破った。どちらの王者も、際立っていたのは体の大きさや足の速さといった目に見える能力よりも、戦況を把握し、判断を共有する情報処理とコミュニケーションのスキルだった。

 パナソニックの林泰基は、CTBのペアを組む霜村誠一と、試合中ずっとしゃべり続けるという。

「いろんなことを話しますよ。今誰は息があがってるとか、ちょっと今しんどいから、次は頼むとか、そんなことも」

 FWは選手同士が近い分、周りからは見えにくいが、「スクラム1本1本、細かいところを話して修正してます」とフッカー堀江翔太主将は明かす。

 帝京大も、NEC戦では流大(ながれ・ゆたか)主将と松田力也のHB団を中心に、プレーが途切れるたびに大きな身ぶりを交えて情報を交換し合っていた。予想外の展開があっても混乱せずに冷静かつ柔軟に対応していた成熟した試合運びは、濃密なコミュニケーション力に支えられていた。

 日本人は状況判断が苦手と言われてきたが、実は一番のびしろがあるのでは。冬を制圧した2つの王者の戦いぶりを見ていて、そんな夢が頭をよぎった。

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