SCORE CARDBACK NUMBER

「生ける伝説」に挑戦。井上尚弥は勝てるのか?
~2階級上げての世界戦への覚悟~ 

text by

前田衷

前田衷Makoto Maeda

PROFILE

photograph byBOXING BEAT

posted2014/12/03 10:00

「生ける伝説」に挑戦。井上尚弥は勝てるのか?~2階級上げての世界戦への覚悟~<Number Web> photograph by BOXING BEAT

 ボクシングファンがワクワクするような「好カード」の定義とは、まず戦う両選手が著名で、どちらが勝つか分からない試合であることだ。この定義を当てはめると、年末に東京と大阪で予定される少なくとも8試合の世界戦の中で一番の好カードは、WBOスーパーフライ級戦ということになるだろう。

 プロ6戦目で世界を制した21歳の“怪物くん”井上尚弥が、体重苦からライトフライ級王座を返上し、2階級上げて39歳の王者オマール・ナルバエスに挑む。年齢だけ比較すれば、若さで圧倒する展開を想像するのもたやすいが、この39歳がただ者ではない。これまでフライ級で16度も王座を守り、さらにスーパーフライ級でも11度防衛、つまり計27度の防衛を果たしている。14年間のプロ生活で46戦して、敗北は'11年にノニト・ドネアのバンタム級王座に挑戦して判定で喫した一度しかない。ドネアの強打をもってしても技巧派のサウスポーを倒すことはできなかった。今のナルバエスはピークではないにせよ、まだ衰えてはいない。生ける伝説のような名チャンピオンである。

ロマゴンも「井上が勝てるとは思えない」と言うが……。

 井上との対戦を希望しているローマン・ゴンサレスは、こう断言している。「井上が勝てるとは思えない。彼にはもっと経験が必要だ」。ロマゴンは井上がやや苦戦した末、アドリアン・エルナンデスを倒した王座獲得戦を観戦している。この試合の井上は体重を落とすのに精力を使い果たし、会心にはほど遠い出来だった。減量苦の少ないスーパーフライ級で存分に動ければ、特にスピードとパワーでナルバエスに対抗できるだろう。

 プロ入りに際し、井上と父・真吾トレーナーが出した注文は「強い相手とやらせてほしい」というものだった。挑戦者として臨んだエルナンデス戦でさえ、戦前の予想は井上有利だったが、今度はそうはいかない。

 それでも、今度の試合に備え、井上がナルバエスと同じ老獪なサウスポー、マルコム・ツニャカオをスパーリングで圧倒しているという情報を聞いて、井上陣営の意図が納得できた。井上はアマ時代に高校生ながら世界のベスト16に入る実績を残し、国際大会での経験も豊富。技術勝負の相手と何度も対戦経験があるのは大きな強みである。まさに怪物くんが本領を発揮する絶好の機会となりそうだ。

関連コラム

関連キーワード
井上尚弥
オマール・ナルバエス
ローマン・ゴンサレス

ページトップ